憲法2:天皇の役割とは?憲法から読み解く“象徴天皇制”をわかりやすく解説

🔸この記事はこんな人におすすめ!
  • 行政書士試験で「憲法」の理解を深めたい方
  • 象徴天皇制の意味や天皇の具体的な役割を押さえたい方
  • 天皇の国事行為や権限の仕組みを図解感覚で把握したい方
  • 「国民主権」と「天皇制」の関係にモヤモヤしている方
目次

天皇の地位はどうなっているの?

かつての大日本帝国憲法では、天皇が国の最高権力者=主権者でした(いわゆる「天皇主権」)。しかし、現在の日本国憲法では主権は国民にあると定められており、天皇は「日本国および日本国民統合の象徴」という立場に位置づけられています(1条)。
つまり、天皇は国の象徴であり、政治の実権は持っていないのです。

皇位はどうやって継がれるの?

天皇の地位は、代々その血筋を引く者が引き継ぐ「世襲制」です。これは民主主義の平等原則とは相容れない制度ですが、日本国憲法では例外的に容認されています2条)。
その理由は、天皇制という伝統を維持するためです。

天皇の権能は? ―「国事行為」のみ

日本国憲法のもとで、天皇は「国事行為」のみを行い、政治的な決定権は一切持ちません4条1項)。国事行為とは、儀礼的・形式的な公務のことで、実質的な政治判断は内閣が行います。

【代表的な国事行為】

具体的な国事行為の例として、内閣総理大臣最高裁判所の長たる裁判官の任命(6条1項・2項)があります。つまり、行政の長と司法の長といった人たちについては、天皇が任命します。

国家機関の指名・任命

指名任命
内閣総理大臣国会6条1項天皇(6条1項
国務大臣内閣総理大臣68条1項
最高裁判所長官内閣6条2項天皇(6条2項
最高裁判所裁判官(長官以外)内閣79条1項
下級裁判所裁判官最高裁判所(80条1項前段内閣80条1項前段

また、天皇は、内閣の助言と承認により、以下のような国事行為を行います。

  1. 憲法改正法律政令条約公布(1号)
  2. 国会召集(2号)
  3. 衆議院の解散(3号)
  4. 国会議員の総選挙の施行の公示(4号)
  5. 国務大臣その他の官吏(国家公務員)の任免の認証(5号)
    ※任免とは、任命と罷免の略
  6. 恩赦の認証(6号)
    大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権をまてめて恩赦という。
  7. 栄典の授与(7号)
  8. 批准書その他の外交文書の認証(8号)
    批准書とは、国家が条約の内容を審査し、確定的な同意を与えた書面のこと。
  9. 外国の大使・公使の接受(9号)
    接受とは、外国の大使・公使と儀礼的に面会すること。
  10. 儀式を行うこと(10号)

国事行為を行うには「内閣の助言と承認」が必要

憲法第3条により、天皇のすべての国事行為は、内閣の助言と承認がなければ行えません
また、天皇はこの助言を拒否することもできないため、形式的な存在としての性質が強いのです。

天皇の代理人制度 ― 摂政と委任

①摂政
天天皇が未成年や重い病気などで職務を果たせない場合、皇室典範に基づき「摂政」がその役割を代行します(皇室典範16条)。

②国事行為の委任
摂政を置くほどではないものの、一時的に天皇が国事行為をできない場合、一定の行為について他者に委任することも可能です(4条2項)。

皇室の財産管理 ― 国会の関与が必須

皇室と国家の健全な関係を保つため、皇室の財産の授受には国会の議決が必要とされています(8条)。これは、皇室が特定の個人や団体と癒着して、不当な権力を持つことを防ぐためです。

🔸まとめ

日本国憲法のもとで、天皇は「象徴」であり、実際の政治権限は持っていません。ただし、国の儀式や重要な形式的手続きに関わる「国事行為」を担うことで、国の安定や伝統の継承に貢献しています

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