憲法3:人権総論を完全整理!分類・享有主体・限界をわかりやすく解説

🎯この記事はこんな人におすすめ
  • 「人権って結局どんな種類があるの?」とモヤモヤしている人
  • 法人や外国人に人権があるかどうかを整理したい人
  • 人権の限界や私人間効力といった難しい概念をスッキリ理解したい人
目次

人権とは?基本のキホン

人権とは「人が生まれながらにして当然に持っている権利」のことです。
日本国憲法ではこの人権をとても大切なものとして位置づけており、その保障の仕組みを理解することは、試験でも重要なポイントです。

人権の4つの分類

人権とは、人間が生まれながらにして当然に持っている権利。人権は大きく以下の4種類に分けられます。

■人権の分類

自由権国家が国民に対して強制的に介入することを排除して、個人の自由な活動を保障する権利
社会権社会的弱者が人間に値する生活を送れるように国家に一定の配慮を求める権利
参政権国民が自己の属する国の政治に参加する権利
国務請求権人権の保障を確実なものとするため、国に対して一定の行為を求める権利

自由権の3つの分類

自由権はさらに次の3つに分けられます。

精神的自由権学問・表現などの精神的活動を行う自由
経済的自由権職業選択などの経済的活動を行う自由
人身の自由国家から不当に身体を拘束されない自由

人権の享有主体:誰が人権を持つのか?

本来、人権は「自然人(=生身の人間)」に保障されるものですが、法人外国人にも適用されるかが問題となります。

法人の人権

法人も社会的に重要な存在であるため、権利の性質上可能な限り」人権が保障されるというのが最高裁の立場です(八幡製鉄事件:最大判昭45.6.24)。

法人に保証される人権法人に保証されない人権
精神的自由権
経済的自由権
国務請求権
人身の自由
社会権
参政権

🔍 主な判例:

外国人の人権

憲法第3章は「国民の権利および義務」と書かれていますが、外国人にも権利の性質上日本国民のみを対象としている場合を除て保障されるとされています(マクリーン事件:最大判昭53.10.4

外国人に保証される人権外国人に保証されない人権
自由権
国務請求権
入国・再入国の自由
社会権
参政権

①入国の自由
入国の自由は、外国人には保障されない。(最大判昭32.6.19
国際法上、国家が自国に危害を及ぼす恐れのある外国人の入国を拒否することは、その国家の権限に属するとされているためです。2

🔍 主な判例:

②社会権
社会権は、各人の所属する国が保障する権利につき、外国人には保障されない。

🔍 主な判例:

③参政権
参政権は、国民が自己の属する国の政治に参加する権利につき、外国人には保障されない。

🔍 主な判例:

人権の限界と制限

①公共の福祉による人権の制限

憲法は、人権を「侵すことのできない永久の権利」(11条)としているから、国家権力は人権を制限することができないのが原則とするものの、人権は絶対無制限ではなく、他人の権利とのバランスを取るために「公共の福祉」によって制限されることがあります(13条

②特別な法律関係に基づく人権制限

国家との特別な関係(例:公務員、受刑者など)にある人は、人権が制限されることがあります。

②-1公務員の人権

公務員は、政治的に中立であることが要求され、政治的目的をもって政治的行為を行うことが禁止されている。

🔍 主な判例:

②-2 在監者の人権

在監者については、逃亡や証拠隠滅などを防止するため、刑事施設に強制的に収容するという身体の拘束が認められている。

🔍 主な判例:

人権の私人間効力(しじんかんこうりょく)

①人権の私人間効力とは
もともと憲法の人権は「国家 vs 国民」を想定したものでした。しかし、企業などの私的団体による人権侵害も問題になるようになりました。そこで、憲法の人権規定が私人と私人の間でも適用されるかといった問題を人権の私人間効力の問題といいます。

②間接適用説(判例の立場)
人権の私人間効力の問題について、考え方が分かれています。まず、憲法の人権規定が私人と私人の間でも直接適用されるとする考え方(直接適用説)。しかし、この考え方によると、私人相互の関係に対して憲法が大きく介入することになり、私的自治の原則に反することになります。
そこで、最高裁判所の判例は、憲法の人権規定は、民法などの私法を通して、間接的に適用されるとしています(三菱樹脂事件:最大判昭48.12.12)。(間接適用説
例えば、女性であることを理由に会社に雇用されなかった場合、憲法14条1項が性別による差別を禁止している以上、このような憲法に反する措置は公の秩序に反するとして、民法90条により無効であると判断しています。(憲法14条1項違反により無効であると判断するわけではない。)

🔍 主な判例:

まとめ

行政書士試験において、「人権総論」は基本であると同時に判例知識も問われる重要分野です。分類・享有主体・制限・私人間効力といったテーマを体系的に理解することが、得点アップへの近道です!

  1. 重要判例:阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会(強制加入団体)に3000蔓延の復興支援拠出金を寄付することは、群馬司法書士会の目的の範囲内の行為であり、そのために登記申請事件1件当たり50円の復興支援特別負担金を徴収する旨の同会の総会決議は有効である(群馬司法書士会事件:最判平14.4.25) ↩︎
  2. 重要判例:憲法上、外国移住の自由が保障されていることから(22条2項)、外国人の出国の自由は保障される(最大判昭32.12.25) ↩︎
  3. 重要判例:外国人には国政選挙権も保障されていない(最判平5.2.26) ↩︎
  4. 重要判例:裁判官に対し「積極的に政治活動をすること」を禁止することは、その目的が正当であって、その目的と禁止との間に合理的関連性があり、禁止により得られる利益と失われる利益との均衡を失するものではないから、憲法21条1項に違反しない(寺西裁判官事件:最大決平10.12.1)。 ↩︎
  5. 重要判例:国が行政の主体としてではなく私人と対等の立場に立って、私人との間で個々的に締結する私法上の契約は、当該契約がその成立の経緯および内容において実質的にみて公権力の発動たる行為と何ら変わりがないといえるような特段の事情の無い限り、憲法9条の直接適用を受けない(百里基地訴訟:最判平1.6.20) ↩︎
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