- 憲法の人権分野を効率よく学びたい行政書士受験生
- 条文と判例のつながりをしっかり理解したい方
- 「奴隷的拘束」「黙秘権」など過去問頻出テーマをサクッと押さえたい方
奴隷的拘束・苦役からの自由
奴隷的拘束とは?
奴隷的拘束とは、奴隷のように自由を奪われ、人格を否定された状態のことを指します。
たとえば「監獄部屋」のような、極端に身体の自由を制限される状況が該当します。
👉 憲法18条前段では、奴隷的拘束は絶対的に禁止されています。
意に反する苦役とは?
意に反する苦役とは、本人の意思に反して、強制的に働かされることを指します。
徴兵制徴兵制などがその典型例です。
👉 ただし、犯罪による処罰としての労役は例外的に許されます(憲法18条後段)。
法的手続の保障
憲法31条のポイントは?
31条は、「法律の定める手続によらなければ、刑罰を科せられない」という規定で、文言上は手続きの法定を意味していますが、実はそれ以外にも以下の3つの原則を含むとされています(通説):
- 法定された手続きの適正(例:告知・聴聞)
- 実体規定の法定(罪刑法定主義)
- 法定された実体規定の適正
告知と聴聞の手続とは?
上記の手続きの中でも特に重要とされるのが、告知と聴聞の手続きです。
国が国民に不利益(罰や処分)を与える場合、その内容を事前に知らせ、当事者に弁明の機会を与える必要があります。これを「告知・聴聞」と言います。
👉 手続の公正を保ち、個人の権利を守るための重要な仕組みです。
行政手続との関係
31条は、「刑罰を科せられない」と規定していることから、直接的には刑事手続に関する規定ですが、行政手続においても準用されるべきと考えられており、実務上も参考にされます。
条例で刑罰を設けられるの?
憲法31条は「法律による手続」としているため、条例で刑罰を設けられるかが問題になります。
→ 判例上、「法律の委任」があれば条例による刑罰も可とされています。
被疑者・被告人の権利
被疑者とは、犯罪の嫌疑を受け捜査の対象とされているものの、まだ訴追されていない者。
被告人とは、犯罪を犯したとして訴追されている者。
被疑者の権利
不法な逮捕からの自由
無実の者を不当に拘束することを阻止するため、逮捕をするためには司法官憲が発する令状が必要(令状主義)(33条)です。
ただし、現行犯逮捕の場合には、真犯人であることが明確であり不当な拘束のおそれは少ないことから、例外的に令状は不要です。
抑留・拘禁からの自由
抑留とは:一時的な身体の拘束のこと
拘禁とは:継続的な身体の拘束のこと
何人も、理由を直ちに告げられ、かつ、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留・拘禁されないと規定されています(34条前段)。
また、拘禁の場合は抑留の場合よりも人身の自由に対する制約が大きいので、捜査機関による不当な拘禁を防止するため、公開の法廷において理由を示すこととされています(34条後段)。
住居の不可侵等
人の生活の中心である住居を不当な侵入等から守り、個人のプライバシーを保護するため、住居・書類・所持品について侵入・捜索・押収する場合には裁判官が発する令状が必要とされています(35条1項)。
もっとも、逮捕に伴い侵入等がなされる場合には、逮捕の時点で令状がでているので、侵入等については令状が不要です。
被告人の権利
残虐刑の禁止
大日本帝国憲法の時代に拷問や残虐な刑罰が行われていたことの反省から、これらを絶対に禁ずる旨の規定が置かれています(36条)。
公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利
憲法37条1項は、刑事被告人に対し、
①公平な裁判所
②迅速な
③公開裁判
を受ける権利を保障していいます。
証人審問権・喚問権
被告人には、証人に対して質問する権利(証人審問権)や、証人を法廷に呼んでもらう権利(証人喚問権)が認められています(37条2項)。
弁護人依頼権
刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができ、被告人が自らこれを依頼することができないときは、国でこれを附することとされています(37条3項)。
なお、「国でこれを附する」とあるのは、いわゆる国選弁護人のこと。
黙秘権の保障
被告人には、自己に不利益な供述を強要されない権利、黙秘権が保障されています(38条1項)。
👉 この権利の行政手続への適用が問題となった例:川崎民商事件
自白
38条2項は、強制・拷問・脅迫による自白または不当に長く抑留・拘禁された後の自白は、証拠とすることができない旨を規定されています(自白法則)。
また、38条3項は、任意になされた自白であっても、これを補強する別の証拠が無ければ、有罪とされない旨を規定している。これを補強法則といいます。
訴求処罰と二重処罰の禁止
39条前段は、何人も、実行の時に適法であった行為または既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われないとして、訴求処罰(事後法)の禁止と一事不再理を規定している。
また、39条後段は、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われないとして、二重処罰の禁止を規定しています。