財政の基本原則
財政民主主義
国歌が活動するために多くの資金が必要となり、その資金は国民が負担する。そのため、財政の適正な運営は、国民生活に直結する国政の重要な問題となる。
そこで、国の財政を処理する権限は、国会の議決に基づいて行使されなければならないとする財政民主主義が採用されている(83条)。
租税法律主義
租税は国民に対して直接負担を求めるものであるため、必ず国民の同意が必要。
そのため、租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とする租税法律主義が採用されている(84条)。
国費の支出および国庫債務負担行為
国費を支出し、または国が債務を負担するには、国会の議決に基づくことを必要とする(85条)。
国費の支出とは、国の各般の需要を満たすための現金の支払い(財政法2条1項)。
「国が債務を負担する」とは、国が財政上の需要を充たすのに必要な経費を調達するために債務を負うこと。
公金支出の禁止
拘禁その他の公の財産は、宗教上の組織もしくは団体の使用、便益もしくは維持のため、または公の支配に属しない慈善、教育もしくは博愛の事業に対し、これを支出し、またはその利用に供してはならない(89条)。
89条前段の趣旨は、宗教上の組織や団体への公金支出を禁止することで、政教分離原則を財政面から保障する。
89条後段の趣旨は、以下の2つの見解が対立している。
❶私的な事業への不当な公権力の支配が及ぶことを防止する点にあるとする見解。
❷拘禁の濫費を防止する点にあるとする見解。
財政監督の方式
予算
予算とは、収入と支出の見積もりのことで、内閣は、毎会計年度の予算を作成し、国会に提出し、その審議を受け、議決を経なければならない(86条)。
86趣旨は、国会による審議・議決を経ることで、国家財政に対する国会の監督を及ぼす点にある。
なお、予算は政府を拘束するのみで一般国民を拘束しないこと、予算の効力は一会計年度に限られること、議決の手続きが法律と異なることなどから、予算は国会の議決を経て成立する国法の一形式ではあるものの、法律とは異なるとするのが通説(予算法形式説)。
予備費
予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる(87条1項)。
また、すべての予備費の支出について、内閣は、事後に国会の承諾を得なければならない(87条2項)。
ただし、国会の承諾が得られなくても、すでになされた予備費の支出の法的効果に影響はなく、内閣の政治責任の問題が生じるのみ。
皇室財産と皇室の費用
皇室財産の民主化を図るため、すべて皇室の財産は国に属するものとされ、また、すべての皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない(88条)。
決算
決算とは、収入と支出の数字を確定する事で、国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない(90条1項)。
「国会に提出」とは、国会が提出された決算をもとに審議し、議決を要するものの、両議院一致の議決は必要ではなく、各議員の議決は決算の効力に影響は及ばさない。
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財政状況の報告
内閣は、国会および国民に対し、定期に、少なくとも毎年1回、国の財政状況について報告しなければならない(91条)。