憲法解説(2):天皇

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天皇の地位

大日本帝国憲法では、天皇は国政に関する最終的な決定権限を有する主権者とされていた(天皇主権)。
しかし、日本国憲法では、国民を主権者(国民主権)とし、天皇は象徴としての地位にとどまるものとした(1条)。

皇位継承

世襲制は、国民の意思に関係なく天皇の血縁者が皇位を継承する制度であり、民主主義の理念や平等原則に反している。しかし、日本国憲法第2条は、天皇制の存続を目的として、例外的に皇位の世襲を規定している。(2条

天皇の権能

①範囲

天皇は、憲法の定める国事に関する行為(国事行為)のみを行い、国政に関する権能を有しない。(4条1項
国事行為は、いずれも形式的・儀礼的な行為。

国事行為の具体例としては、内閣総理大臣最高裁判所の長たる裁判官の任命(6条1項・2項)。
つまり、行政の長と司法の長といった人たちについては、天皇が直々に任命する。

国家機関の指名・任命

指名任命
内閣総理大臣国会6条1項天皇(6条1項
国務大臣内閣総理大臣68条1項
最高裁判所長官内閣6条2項天皇(6条2項
最高裁判所裁判官(長官以外)内閣79条1項
下級裁判所裁判官最高裁判所(80条1項前段内閣80条1項前段

また、天皇は、内閣の助言と承認により、以下のような国事行為を行う。

  1. 憲法改正・法律・政令・条約の公布(1号)
  2. 国会の召集(2号)
  3. 衆議院の解散(3号)
  4. 国会議員の総選挙の施行の公示(4号)
  5. 国務大臣その他の官吏(国家公務員)の任免の認証(5号)
    ※任免とは、任命と罷免の略
  6. 恩赦の認証(6号)
    大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権をまてめて恩赦という。
  7. 栄典の授与(7号)
  8. 批准書その他の外交文書の認証(8号)
    批准書とは、国家が条約の内容を審査し、確定的な同意を与えた書面のこと。
  9. 外国の大使・公使の接受(9号)
    接受とは、外国の大使・公使と儀礼的に面会すること。
  10. 儀式を行うこと(10号)

要件

天皇が国事行為を行うためには、内閣の助言と承認が必要。(3条
天皇はこの助言を拒否することはできない。

代行

①摂政
天皇が成年に達しないときは、精神・身体の重患または事故により自ら国事行為を行うことができないとき、天皇の権能は摂政が代行する。(皇室典範16条)

②国事行為の委任
摂政を置くほどではないものの、天皇が一時的に国事行為を行うことができない場合、天皇は国事行為を他の人に委任することができる。(4条2項

皇室の財産授受の議決

皇室へ財産が集中することや、皇室が特定の個人や団体と特別な関係を結ぶことで不当な支配力を持つことを防ぐため、皇室の財産授受については国会の議決が必要。(8条

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