幸福追求権
幸福追求権とは
日本国憲法は、14条~40条で人権(自由権・社会権・参政権・国務請求権)について詳しく規定している。
これらの規定は、歴史的に国家権力による侵害の多かった重要な人権を挙げたものにすぎず、すべての人権を網羅したものではない。また、社会の変化により、憲法が作られた当時では考えられなかった人権侵害がなされる可能性がある。
そこで、14条~40条に挙げられていない人権であっても、個人が人格的に生存するために不可欠と考えられるものは、「新しい人権」として憲法上保障される。
その根拠となる規定が幸福追求権(幸福追求に対する国民の権利)を定めた13条後段となる。
新しい人権
幸福追求権を根拠として認められた「新しい人権」として、肖像権・プライバシー権・自己決定権などがある。
①肖像権
肖像権とは許可なく容貌・姿態を撮影されない権利のこと。最高裁判所の判例は、憲法13条を根拠に実質的な肖像権を認めている。(※肖像権を認めると名言したわけではない)
②プライバシー権
プライバシー権とは、従来、「私生活をみだりに公開されない権利」(消極的権利)と定義されてきた。しかし、情報化社会の進展に伴い公権力や大企業等によって個人情報が保有されるようになったことから、人格的な生存を実現するためには、単に私生活を公開されないだけでなく、自分の情報を自分でコントロールできるようにする必要が生じた。そこで、現在では積極的権利の側面も加味して、プライバシー権とは、自己に関する情報をコントロールする権利と定義されている。
③自己決定権
自己決定権とは、個人の人格的生存にかかわる重要な事柄を国家権力の干渉なしに各自が決定することができる権利。
法の下の平等

憲法は、法の下の平等を規程している。(14条1項)
さらに個別的に、貴族制度の廃止(14条2項)・栄典に伴う特権の禁止(14条3項)といった規定を設けて、平等原則の徹底化を図っている。
法の下の平等の意味
「法の下」の意味は、法を平等に適用しなければならないこと(法適用の平等)のみならず、法の内容自体も平等でなければならないこと(法内容の平等)も含まれる。
なぜなら、不平等な内容の法を平等に適用したとしても、不平等は解消されないため。
次に「平等」の意味は、事実上の違いを無視して機械的に平等に取り扱うこと(絶対的平等)ではなく、事実上の違いを前提に結果として平等になるよう取り扱うこと(相対的平等)を意味する。
なぜなら、事実上の違いを無視して機械的に平等に取り扱うと、かえって不平等な結果となる場合があるため。
このように、憲法14条1項は、国民に対し絶対的な平等を保障したものではなく、差別すべき合理的な理由なくして差別することを禁止している趣旨のため、事柄の性質に即応して合理的と認められる差別的取り扱いをすることは、憲法14条1項に違反するものでなはい。(最大判昭39.5.27)
法の下の平等が及ぶ範囲
憲法14条1項は人種・信条・性別・社会的身分・門地を列挙しているが、これらの事由は例示的なものであって、これ以外の事由についても法の下の平等の保障は及ぶ(最大判昭39.5.27)。
- 人種
人種とは、皮膚・毛髪・目・体型等の身体的特徴によって区別される人類学上の種類 - 信条
信条とは、宗教上の信仰のみならず、思想上・政治上の主義を含む(最判昭30.11.22)。 - 性別
性別による差別が問題となった判例には以下がある
女性の再婚禁止期間(最大判平27.12.16) - 社会的身分
社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位のこと(最大判昭39.5.27)
■社会的身分による差別が問題となった判例
尊属殺重罰規程違憲判決(最大判昭48.4.4)
婚外子国籍訴訟(最大判平20.6.4)
非嫡出子の相続分(最大決平25.9.4) - 門地
門地とは、家柄のこと
議員定数不均衡
議員定数不均衡とは、選挙において、各選挙区の議員定数の配分に不均衡があり、人口数との比率において、選挙人の投票価値に不平等が生じていること。※一票の重みが違う。
- 衆議院の場合
衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭51.4.14)
衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判昭60.7.17)
衆議院議員定数不均衡訴訟(最大判平23.3.23) - 参議院の場合
参議院議員定数不均衡訴訟(最大判平24.10.17) - 地方議会の場合
地方議会と議員定数不均衡(最判昭59.5.17)