憲法(8):社会権

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生存権

生存権とは、憲法25条1項で定める「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」のこと。
これは、福祉国家の理想に基づき社会的・経済的弱者を保護するために保証されている。

・朝日訴訟:最大判昭42.5.24
・堀木訴訟:最大判昭57.7.7

教育を受ける権利

教育を受ける権利とは?

憲法は教育を受ける権利を保障(26条1項)。これは、個人が人格を形成するためや、社会生活を向上させるために不可欠なため。

子どもの教育の内容を決定する権能は誰に帰属するか?については、2つの説がある。

  • 国家教育権説
    法律は、当然に公教育における教育の内容および方法を包括的に定めることができるとする説。
  • 国民教育権説
    国の子どもの教育に対する関わり合いは、国民の義務教育の遂行を側面から助成するための諸条件の整備に限られ、教育の内容や方法は教育の実施に当たる教師が教育専門家としての立場から決定すべきとする説。

この2つの説が対立しているものの、旭川学テ事件判決(最大判昭51.5.21)は、❶❷とも極端かつ一方的であるとして、折衷的な見解にたっている。

・旭川学テ事件判決:最大判昭51.5.21

義務教育はだれが負う義務か?

義務教育という名称から、国民に普通教育を受ける義務があるように思われるが、憲法上の規定では保護する子女に普通教育受けさせる義務26条2項前段)。つまり義務は親が負っている。

義務教育は無償とすると規定されている(26条2項後段)ものの、この無償の意義が争われた。
最高裁判所の判例は、授業料の他に教科書・学用品その他一切の費用まで無償としなければならないことを定めたものではない。とし、「無償」とは授業料不徴収の意味であるとしている。

・最大判昭39.2.26

勤労の権利

国民の生存は、まずは国民の勤労によって確保されるべきであり、勤労の自由や適切な労働条件の下で労働する機会を確保するために勤労の権利が規定されている(27条1項)。
なお、27条1項は働く能力のある者は自らの勤労によってその生活を維持すべきであるという勤労の義務も規定している。

労働基本権

労働基本権とは?

労働者を保護するため、労働者を使用者と対等の立場に立たせるため労働基本権が認められている。

  1. 団結権…労働条件の維持・改善のために使用者と対等に交渉する団体の結成や、それに参加する権利。

  2. 団体交渉権…労働者の団体がその代表を通じて、労働条件について使用者と交渉する権利。

  3. 団体行動権(争議権)…ストライキその他の争議行動を行う権利。


の3つがある(28条)。

・三井美唄事件:最大判昭43.12.4
・国労広島地本事件:最判昭50.11.28
・最大判昭41.10.26

公務員の労働基本権とは?

公務員の場合、労働基本権を無制限に求めると国民の生活に不利益が生じるため、一部の権利に制限がかかっている。

団結権団体交渉権団体行動権
警察職員・消防職員・自衛隊員・海上保安庁・刑事施設職員×××
非現業の一般の公務員
団体協約締結権は保障されない
×
現業の公務員×

・全農林警職法事件:最大判昭48.4.25
・最判平12.3.17
・最大判賞51.5.21

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