親権とは?
親権とは、親が子を監護し教育するとともに、子の財産を管理する職分のことです。未成年の子は、父母の親権に服し(818条1項)、養子である場合は養親の親権に服します(818条2項)。
親権の行使者
親権は、父母の婚姻中であれば、父母が共同で行うことになっています(818条3項本文)。ただし、父母の一方が親権を行うことができない場合は、他の一方が単独で行うことになります(818条3項但書)。
親権の内容
身上監護
親権を行う者は、子の利益のために、子を監護1し教育2する権利と義務を負います(820条)。
財産管理
親権を行う者は、子の財産を管理し、さらに、その財産に関する法律行為について子を代表します(824条本文)。このような権限を「法定代理権」といいます。
利益相反行為
特別代理人の選任
親権を行う父または母とその子との間で利益が相反する行為(利益相反行為)については、親権者は家庭裁判所に対し、その子のために特別代理人の選任を請求しなければなりません(826条1項)。これは、親権者と子の利益が衝突する場合、親権者による公正な代理が期待できないためです。3
利益相反の判断基準
利益相反行為に該当するかどうかは、親権者が子を代理して行った行為自体を、外形的客観的に考察して判定すべきとされています。親権者がその行為をする際にもっていた動機や意図によって判断するべきではないとされています。4
- 利益相反行為に当たる例
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以下のような行為は、利益相反行為に該当するとされています。
- 第三者の金銭債務について、親権者が自ら連帯保証をするとともに、子の代理人として同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定する行為(最判昭43.10.8)
- 親権者が共同相続人である数人の子を代理してなした遺産分割協議(最判昭49.7.22)
- 利益相反行為に当たらない例
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以下のような行為は、利益相反行為には当たらないとされています。
- 親権者が未成年の子を代理して子の所有する不動産を第三者の債務の担保に供する行為(最判昭35.7.15、最判平4.12.10)
利益相反行為の効力
親権者が子を代理して行った利益相反行為は、無権代理行為となります(最判昭46.4.20)。ただし、子が成年に達した後に、その行為を追認することは可能です(大判昭11.8.7)。
親権の喪失
児童虐待の防止し、児童の権利と利益を守るために、民法では「親権喪失の審判」(834条)および「親権停止の審判」(834条の2)の制度を設けています。
- 親権喪失の審判
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親権喪失の審判が下される要件は、以下のとおりです。
- 積極的要件
- 父または母による親権の行使が著しく困難または不適当であることにより子の利益を著しく害すること
- 子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官の請求があること
- 消極的要件
- 2年以内にその原因が消滅する見込みがないこと
- 積極的要件
- 親権停止の審判
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親権停止の審判が下される要件は、以下のとおりです。
- 積極的要件
- 父または母による親権の行使が困難または不適当であることにより子の利益を著しく害すること
- 子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人または検察官の請求があること
- 積極的要件