【重要判例】最大判令4.5.25:在外国民の国民審査

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事案

在外国民に国民審査に係る審査権の行使が認められなかったことにつき、立法不作為の違憲を理由として、国家賠償請求をなした。

結論

違憲。国家賠償請求は認められる。

判旨

①国民審査権の制限の合憲性

審査権が国民主権の原理に基づき憲法に明記された主権者の権能の一内容である点において選挙権と同様の性質を有することに加え、憲法が衆議院議員総選挙の際に国民審査を行うこととしていることにも照らせば、憲法は、選挙権と同様に、国民に対して審査権を行使する機会を平等に保障しているものと解するのが相当である。

憲法の以上の趣旨に鑑みれば、国民の審査権またはその行使を制限することは原則として許されず、審査権またはその行使を制限するためには、そのような制限をすることがやむを得ないと認められる事由がなければならないというべきであり、これは立法の不作為による場合であっても同様である。

②立法不作為の違法性

法律の規定が憲法上保障されまたは保護されている権利利益を合理的な理由なく制約するものとして憲法の規定に違反するものであることが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってその改廃等の立法措置を怠る場合などにおいては、国会議員の立法過程における行動が上記職務上の法的義務に違反したものとして、例外的に、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることがあるというべきである。

そして、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するための立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠るときは、上記の例外的な場合に当たるものと解するのが相当である。

③あてはめ

在外審査制度の創設に当たり検討すべき課題があったものの、その課題は運用上の技術的な困難にとどまり、これを解決することが事実上不可能ないし著しく困難であったとまでは考え難いことに加え、国会において在外国民の審査権に関する憲法上の問題を検討する契機もあったといえるにもかかわらず、国会は、約10年の長きにわたって、在外審査制度の創設について所要の立法措置を何らとらなかったというのであるから、在外審査制度を創設する立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠ったものといえる。

そうすると、本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきである。

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