行政法16-1:「取消訴訟」とは?処分取消訴訟・裁決取消訴訟の違いと原処分主義・裁決主義をわかりやすく解説!

🎯 この記事はこんな人におすすめ!
  • 「取消訴訟の種類って何?」と疑問に思っている行政書士試験の受験生
  • 「処分取消訴訟と裁決取消訴訟の違い」を整理したい方
  • 「原処分主義・裁決主義」の理解を深めたい人
  • 行政事件訴訟法の論点をサクッとおさらいしたい人
目次

取消訴訟の種類とは?処分取消訴訟と裁決取消訴訟の違い

行政事件訴訟法における「取消訴訟」には、以下の2種類があります。

▶ 処分取消訴訟

行政庁の「処分」や、その他の公権力の行使に当たる行為に対する取消しを求める訴訟です。
たとえば、建築許可の取り消しや、営業停止処分などが対象となります。(3条2項

▶ 裁決取消訴訟

審査請求などの不服申立てに対して行政庁が行った「裁決」や「決定」などの行為を取り消してほしいときに提起する訴訟です。(3条3項

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR

 subgraph 取消訴訟以外の抗告訴訟
  無効等確認訴訟
  不作為の違法確認訴訟
  義務付け訴訟
  義務付け訴訟
  差止め訴訟
  仮の義務付け/仮の差止め
 end

 subgraph 取消訴訟
  処分取消訴訟
  裁決取消訴訟
 end


行政事件訴訟 --> 主観訴訟["主観訴訟<br>国民の個人的な<br>権利の保護"]
 主観訴訟 --> 抗告訴訟
  抗告訴訟 --> 法定抗告訴訟
   法定抗告訴訟 --> 処分取消訴訟
   法定抗告訴訟 --> 裁決取消訴訟
   法定抗告訴訟 --> 無効等確認訴訟
   法定抗告訴訟 --> 不作為の違法確認訴訟
   法定抗告訴訟 --> 義務付け訴訟
   法定抗告訴訟 --> 差止め訴訟
  抗告訴訟 --> 無名抗告訴訟 
 主観訴訟 --> 当事者訴訟
  当事者訴訟 --> 形式的当事者訴訟
  当事者訴訟 --> 実質的当事者訴訟
行政事件訴訟 --> 客観訴訟["客観訴訟<br>客観的な法秩序<br>の適正"]
 客観訴訟 --> 民衆訴訟
 客観訴訟 --> 機関訴訟

click 処分取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/"
style 処分取消訴訟 color:#1176d4,fill:#ffb6c1
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh16-1/"
style 裁決取消訴訟 color:#1176d4,fill:#ffb6c1
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-1/"
style 無効等確認訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-2/"
style 不作為の違法確認訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-3/"
style 義務付け訴訟 color:#1176d4
click 裁決取消訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-4/"
style 差止め訴訟 color:#1176d4
click 仮の義務付け/仮の差止め "https://gs.kabudata-dll.com/gh17-5/"
style 仮の義務付け/仮の差止め color:#1176d4
click 当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-1/"
style 当事者訴訟 color:#1176d4
click 形式的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-2/"
style 形式的当事者訴訟 color:#1176d4
click 実質的当事者訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh18-3/"
style 実質的当事者訴訟 color:#1176d4
click 民衆訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/"
style 民衆訴訟 color:#1176d4
click 機関訴訟 "https://gs.kabudata-dll.com/gh19-1/"
style 機関訴訟 color:#1176d4

処分取消訴訟と裁決取消訴訟の関係

ここで重要なのが「原処分主義」と「裁決主義」という2つの考え方です。

原処分主義

審査請求をした結果、不服が退けられた場合でも、最初に出された処分(原処分)の違法を理由に裁判で争いたいなら「処分取消訴訟」を起こしてください、というルールです。これを原処分主義といいます。1

🔑 ポイント:原処分の違法を主張して「裁決取消訴訟」を提起することはできません(行政事件訴訟法10条2項)。
なぜなら、裁判所が判断すべき対象が不明確になり、審理が複雑になるからです。

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR

原処分の違法 --"〇"--> 処分取消訴訟
裁決の違法 --"〇"--> 裁決取消訴訟
原処分の違法 --"×できない"--> 裁決取消訴訟

🔷 裁決主義とは?

一方で、行政事件訴訟法以外の個別法によって、審査請求をしたものの、これを認めない裁決がされた場合に、「裁決取消訴訟のみ認められている」場合もあります。この場合は、原処分の違法性についても裁決取消訴訟の中で主張できます。2これを裁決主義という。

🔑 ポイント:特別法によって「裁決取消訴訟しかできない」とされているケースでは、原処分の違法もその中で判断してもらうしかありません。

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  theme: neutral
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原処分の違法 --"×できない"--> 処分取消訴訟
裁決の違法 --"〇"--> 裁決取消訴訟
原処分の違法 --"〇"--> 裁決取消訴訟

✅ まとめ

訴訟の種類内容ポイント
処分取消訴訟処分や公権力の行使に対する取消し原処分の違法を直接争う場合はこちら
裁決取消訴訟不服申立てに対する裁決などの取消し特別法で定められているときに使用
  • 原処分主義:原処分を争うなら、処分取消訴訟で。
  • 裁決主義:法律で定めがあるときは、裁決取消訴訟で原処分の違法も争える。
  1. 参考:原処分主義によると、裁決取消訴訟では、裁決固有の瑕疵(議決権限のない行政庁が裁決を行ったことや、裁決の手続が違法であること)についてのみ主張することができる ↩︎
  2. 具体例:例えば、公職選挙法203条2項は、「地方公共団体の議会の議員及び長の選挙の効力に関する訴訟は、…意義の申出又は審査の申立てに対する都道府県の選挙管理委員会の決定または裁決に対してのみ提起することができる。」と規定している。 ↩︎
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