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事案
改修工事完成区間とされていた多摩川の一部が決壊し、周辺住民の住宅が失われる災害が発生した。そこで、周辺住民は、多摩川の管理者である国に対して、国家賠償請求訴訟を提起した。
結論

国家賠償請求は認められる。
判旨
河川は、当初から通常有すべき安全性を有するものとして管理が開始されるものではなく、治水事業を経て、逐次その安全性を高めてゆくことが予定されているものであるから、河川が通常予測し、かつ、回避し得る水害を未然に防止するに足りる安全性を備えるに至っていないとしても、直ちに河川管理に瑕疵があるとすることはできず、河川の備えるべき安全性としては、一般に施行されてきた治水事業の過程における河川の改修、整備の段階に対応する安全性をもって足りるものとせざるを得ない。そして、工事実施基本計画が策定され、その計画に準拠して改修・整備がされ、あるいはその計画に準拠して新規の改修・整備の必要がないものとされた河川の改修・整備の段階に対応する安全性とは、同計画に定める規模の洪水における流水の通常の作用から予測される災害の発生を防止するに足りる安全性をいう。