行政法25-1:地方公共団体の「議会」とは?

目次

議会の地位

憲法93条1項は、地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置することとしている。これを受けて、地方自治法89条1項も、地方公共団体に、議事機関として、普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織される議会を設置することとしている。1

地方公共団体の議会は、国の議会である国会が国権の最高機関である(憲法41条)のと異なり、長と対等の地位を有することになる。これは、地方公共団体の議会の議員も、ともに住民により直接選挙される点(憲法93条2項)で、国会議員のみが国民により直接選挙される国の関係とは異なるため。

議会の構成

議会は、議員とその中から選挙される議長・副議長で構成される。

議員

地方自治法上、議会の議員2の任期は、4年とされている(93条1項)。

そして、議会の議員は、衆議院議員参議院議員92条1項)、他の地方公共団体の議会の議員・常勤の職員・短時間勤務職員(92条2項)と兼ねることができない(兼職禁止)。

なお、議会の議員は、議員の定数の12分の1以上の者の賛成により、議会の議決すべき事件につき、議会に議案を提出することができる(112条1項本文・2項)。

ただし、予算については提出することができない112条1項但書)。

議長・副議長

議会は、議員の中から議長・副議長1人を選挙しなければならない(103条1項)。

議長は、議場の秩序を保持し、議事を整理し、議会の事務を統理し、議会を代表する(104条)。また、委員会に出席し、発言することができる(105条)。

議長に事故があるとき、または議長が欠けたときは、副議長が議長の職務を行う(106条1項)。

議会の活動

召集

議会の招集は、が行う(101条1項)。

もっとも、臨時会の場合、議長は議会運営委員会の議決を経て、議員定数の4分の1以上の者はこの議決を経ずに、長に対して会議に付議すべき事件を示して臨時会の招集を請求することができる(101条2項・3項)。
※参考:議会の招集請求があったときは、長は、請求のあった日から20日以内に臨時会を招集しなければならない(101条4項)。

そして、議長等の臨時会の招集請求に対して長が召集しないときは、議長が臨時会を招集することができる(101条5項)。

会期

地方公共団体の議会も、国会と同様に、1年を通じて常に活動しているわけではなく、活動するのは一定の期間(会期)に限られている。

会期には、定例会臨時会の2種類がある(102条1項)。

  • 定例会
    案件の有無に関係なく、毎年条例で定める回数、定期的に招集されるもの(102条2項)。

  • 臨時会
    必要がある場合にあらかじめ告示された特定の事件を審議するために召集されるもの(102条3項・4項)。

もっとも、条例により、定例会・臨時会の区分を設けず、通年の会期(条例で定める日から翌年の当該日の前日まで)とすることもできる(102条の2第1項)。

議事・議決

議会は、議員定数の半数以上が出席しなければ、議事を開き議決をすることができない(113条本文)。国会の定足数は3分の1以上であったが、地方公共団体の議会の定足数は、これよりも厳しく設定されている。3

また、議会の議事は、出席議員の過半数で決定し、可否同数のときは、議長が決定権をもつ(116条1項)。このように、表決数については、国会の場合と同様。4

会議の公開

議会の会議は、国会の場合と同様、公開が原則(115条1項本文)。

もっとも、議長または議員3人以上の発議により出席議員の3分の2以上の多数で議決した場合、秘密会を開くことができる(115条1項但書)。

議会の権限

議会は、条例の制定・改廃、予算の議決、決算の認定、契約の締結など、地方自治法96条1項各号に列挙された事項について議決する権限を有する。5

また、列挙された事項以外であっても、法定受託事務に係るものであって国の安全に関することその他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除き、条例で議決事項を追加することができる(96条2項)。

さらに、議会は以下のような権限を有している。

検査権・監査請求権(98条1項調査権(100条1項
意味地方公共団体の事務に関する書類・計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長や行政委員会の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査する権限地方公共団体の事務に関する調査を行い、選挙人その他の関係人の出頭および証言ならびに記録の提出を請求する言々
除外理由自治事務にあっては、労働委員会・収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるもの、法定受託事務にあっては、国の安全を害するおそれがあることその他の事由により対象とすることが適当でないものとして政令で定めるもの

委員会制度

議会には、通常、本会議と委員会がある。

本会議は、議員全員で構成される議会の意思決定機関である。これに対して、委員会は、一定の分野を集中的に審議するために、一部の議員で構成される合議制の機関。本会議のほかに委員会が置かれるのは、一部の議員が集中提起に審議してその結果を本会議に報告した方が、たくさんの案件をスムーズに処理できるため。

委員会には、①常任委員会、②議会運営委員会、③特別委員会の3種類があるが、いずれも置くかどうかは議会の事由とされている(109条1項)。

  • 常任委員会6
    その部門に関する調査や議案・陳情の審査などを行う常設の委員会(109条2項

  • 議会運営委員会
    議会の運営・会議規則に関する事項や議長の諮問に関する事項などを調査する常設の委員会(109条3項

  • 特別委員会7
    議会の議決により付議された事件を審査する特別の必要がある場合に設置される委員会(109条4項

請願

普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない(124条)。

解散

議会が解散するのは、次のような場合。

  1. 参考:町村は、条例で定めれば、議会を置かずに有権者で構成される町村総会を設置することができる(94条)。 ↩︎
  2. 参考:議員の定数は、条例で自由に定めることができる(90条1項91条1項)。 ↩︎
  3. 参考:議会の議員の定数の半数以上の者から請求があるときは、議長はその日の会議を開かなければならない(114条1項)。 ↩︎
  4. 参考:議長や議員は、自己の一身上に関する事件や自己の従事する業務に直接関係のある事件については、原則として、議事に参加することができない(117条本文)。 ↩︎
  5. 参考:議会は、予算について増額して議決することもできる(97条2項本文)。 ↩︎
  6. 具体例:東京都議会では、財政委員会・文教委員会・厚生委員会などが置かれている ↩︎
  7. 具体例:予算特別委員会など ↩︎
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