行政法24:「自治事務」と「法定受託事務」の違いをやさしく解説!|地方自治法のポイントまとめ

📌この記事はこんな人におすすめ
  • 行政書士試験の「地方自治法」が苦手で、特に「地方公共団体の事務」の分類がわかりづらいと感じている方
  • 自治事務」と「法定受託事務」の違いをシンプルに整理したい方
  • 試験本番で得点につながるよう、条文ベースで正確な知識を身につけたい方
目次

地方公共団体が処理する「2種類の事務」とは?

地方公共団体(都道府県・市町村など)は、日々さまざまな事務を処理していますが、その事務は大きく以下の2つに分類されます。

それぞれの特徴と違いを、分かりやすく見ていきましょう。

✅自治事務とは?

自治事務とは、地方公共団体が本来果たすべき事務であって、法定受託事務以外のものと定義されています。1

たとえば、

  • 介護保険サービス
  • 国民健康保険の給付
  • 児童福祉・老人福祉
  • 障害福祉サービス
  • 各種助成金等
  • 公共施設の管理など

など、その地域の実情に応じて判断・運営されるべきものが含まれます。

🔍国との関係は?

自治事務は、地方自治体の自主性が重視されるため、国は地方が地域の特性に合わせて対応できるよう、国は特別な配慮をしなければならないとされています(第2条13項)。

自治事務の概要

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
地方公共団体の事務 --> 自治事務
地方公共団体の事務 --> 法定受託事務
法定受託事務 --> 第1号法定受託事務
法定受託事務 --> 第2号法定受託事務

✅法定受託事務とは?

法定受託事務とは、本来は国や都道府県が行うべき事務を、法令に基づいて地方公共団体が行うものです(第2条第9項)。

つまり、「地方が国の代わりに処理する事務」とも言えます。

2つの分類

法定受託事務は、さらに以下の2つに分類されます。

国が行うべき事務を都道府県・市町村・特別区が処理する第1号法定受託事務と、都道府県が行うべき事務を市町村・特別区が処理する第2号法定受託事務があります。

たとえば、

などが該当します。

種類内容
第1号法定受託事務の事務を、都道府県・市町村・特別区が行うもの
(例:国政選挙、戸籍の管理、パスポートの交付、生活保護の決定、国道の管理など)
第2号法定受託事務都道府県の事務を、市町村・特別区が行うもの
(例:都道府県知事や議会の議員の解職投票の事務など。)
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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
 subgraph 都道府県_市町村_特別区
  都道府県
  市町村
  特別区
 end
国 -->|第1号| 都道府県_市町村_特別区
都道府県 -->|第2号| 市町村
都道府県 -->|第2号| 特別区

✅自治事務と法定受託事務の違いまとめ

以下の表で、両者の違いをわかりやすく整理します。

自治事務法定受託事務
議会の議決事項自由に追加可能一部制限あり
国の安全に関する事その他の事由により議会の議決すべきものとすることが適当でないものとして政令で定めるものを除き、追加できる
議会の検査権・
調査権・
監査請求権
労働委員会・収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、行使することができる国の安全を害するおそれがあることその他の事由により対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除き、行使することができる
監査委員の監査
国の代執行による関与不可可能
国の行政機関に対する審査請求不可(例外あり)可能

✅地方公共団体の事務処理に関する4つの原則

地方自治法では、地方公共団体が事務を処理する際の基本的な考え方(原則)も定められています。

  • 法令の解釈指針
    地方公共団体に関する法令の規定は、地方自治の本旨に基づいて、かつ、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえてこれを解釈し、および、運用するようにしなければならない(2条12項)。

  • 効率性の原則
    地方公共団体は、その事務を処理するにあたっては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最小の経費で最大の効果をあげるようにしなければならない(2条14項)。

  • 合理化・適正化の原則
    地方公共団体は、常にその組織および運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めて、その規模の適正化を図らなければならない(2条15項)。

  • 法令適合の原則
    地方公共団体は、法令に違反してその事務を処理してはならず、市町村および特別区は、当該都道府県の条例に違反してその事務を処理してはならない(2条16項)。
    ※法令適合の原則に違反した行為は、無効とされる(2条17項)。

✍まとめ|「誰が・どんな根拠で」行っている事務なのかを意識しよう!

行政書士試験では、「自治事務か法定受託事務か?」という区別が問われるだけでなく、それぞれの性質や国との関係、議会との関係が細かく問われます。

特に「法定受託事務は国の関与が強い」という基本イメージを持ちながら、条文や表で知識を整理しておくことが合格への近道です。

  1. 具体例:飲食店営業の許可、病院・薬局の開設許可、都市計画の決定など ↩︎
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