- 「地方自治法」の「執行機関」の範囲がよくわからない…
- 長・行政委員会・補助機関の役割の違いを整理したい!
- 行政書士試験でよく出る地方公共団体の組織構造をスッキリ理解したい!
執行機関とは?
地方自治法における「執行機関」とは、地方公共団体の事務を管理し、それを実際に執行する機関のことです。国の「行政庁」に似た存在であり、住民の意思に基づいて行政を動かす役割を担います(138条の4第1項)。
執行機関には、大きく次の3種類があります。
- 長(知事・市町村長)
- 行政委員会(行政委員)
- 補助機関(副知事、副市町村長、会計管理者など)
長(都道府県知事・市町村長)の役割と権限
長の地位
権限
長は、以下の権限をもっています。1
長は、地方自治体のトップであり、行政の方向性をリードします。
補助機関とは?長の右腕となる存在
長の職務をサポートするのが補助機関です。主な補助機関には以下があります。
副知事(都道府県)/副市長村長(市町村):任意設置(161条)
会計管理者:必置(168条1項)
副知事は都道府県に、副市町村長は市町村に置かれ、定数は条例で定めるものとされている(条例で定めることにより置かないこともできる)(161条)。3
一方、会計管理者は、財務処理の中枢を担う重要ポジション。すべての地方公共団体に1名必ず置かれます。(168条1項)。4
行政委員会(行政委員)とは?長から独立した合議制・独任制機関
長の権限が集中しすぎるのを防ぐために設けられたのが、「行政委員会」や「行政委員」です(138条の4)。
複数の人間で構成される合議制の機関の場合は行政委員会、1人の人間で構成される独任制の機関の場合は行政委員と呼ばれます。
都道府県・市町村には、以下のような行政委員会(行政委員)を置かなければならない(180条の5)。
都道府県 | 市町村 | |
---|---|---|
共通 | 教育委員会 選挙管理委員会 人事委員会(または公平委員会) 監査委員 | |
都道府県もしくは 市町村のみ必要 | 公安委員会 労働委員会 収用委員会 海区漁業調整委員会 内水面漁場管理委員会 | 農業委員会 固定資産評価審査委員会 |
行政委員会(行政委員)の権限
【独自のルール制定が可能】
行政委員会5は、法律の定めるところにより、法令または普通地方公共団体の条例もしくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる(138条の4第2項)。
条例や長の規則との違いは次の通り。
権利の制限 義務の賦課 | 罰則 | 根拠法 | |
---|---|---|---|
条例 | 可能 (14条2項) | 刑罰または過料 (14条3項) | 地方自治法 |
長の規則 | 不可 | 過料のみ (15条2項) | 地方自治法 |
委員会の規則 | 不可 | 不可 | 個別の法律による授権が必要(138条の4第2項) |
監査機関も押さえよう!監査委員と外部監査の違い
監査委員とは、地方公共団体の事務や会計の処理が適正に行われているかをチェックする機関のこと。この監査委員は、独任制の機関です。6
監査委員は、長が、議会の同意を得て、識見を有する者(人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者)および議員の中から選任します(196条1項本文)。7
監査委員の定数は、都道府県および政令で定める市にあっては4人、その他の市および町村にあっては2人とされているが、条例でその定数を増加することができる(195条2項)。
【監査委員】まとめ
・地方公共団体の事務や会計処理が適正かをチェック
・長が議会の同意を得て、識見ある者や議員から選任(196条1項本文)
・定数は基本:都道府県・政令指定市=4人、その他=2人(195条2項)
監査の種類
監査委員による監査には、自主的に行われる一般監査と、住民・議会・長からの請求・要求に基づいて行われる特別監査の2種類があります。9
- ①一般監査
- ②特別監査
-
など
外部監査制度とは?
監査委員の監査とは区別されるものとして、外部監査人との契約による監査がある(外部監査制度)これは、地方公共団体におけるチェック機能を強化するために、外部の専門家が契約に基づいて行う監査のことをいいます。10
外部監査制度には、包括外部監査制度と個別外部監査制度の2種類があります。
包括外部監査制度 | 個別外部監査制度 | |
---|---|---|
意味 | 毎会計年度ごとに契約を締結し、外部監査人が自己の判断に基づき特定の事件を監査する制度 | 議会・長などの請求・要求があった場合に、個別の事項ごとに契約を締結し、監査委員に代わって監査する制度 |
導入の義務 | 都道府県、指定都市、中核市は必須 それ以外は条例により任意 | 条例によって任意 |
【外部監査制度】まとめ
・外部の専門家が契約に基づいて行う監査
・包括外部監査/個別外部監査の2種類
・地方行政の透明性確保のために導入されています
まとめ
執行機関は、地方自治の現場で「意思決定」と「執行」を担う重要なプレイヤーたちです。
長・補助機関・行政委員会(行政委員)・監査委員の違いをしっかり押さえておくことで、行政書士試験でも得点源になります!
- 参考:長は執行機関相互の間にその権限の帰属につき疑義が生じたときは、これを調整するよう努めなければならない(138条の3第3項)。 ↩︎
- 調製:作成すること ↩︎
- 参考:副知事・副市町村長は長が議会の同意を得て選任する(162条)。 ↩︎
- 参考:会計管理者は、長がその補助機関である職員の中から任命する(168条2項)。 ↩︎
- 参考:行政委員会は、①予算の調製・執行、②議会に対する議案の提出、③地方税の賦課徴収、分担金・加入金の徴収、過料を科すこと、④決算の議会への認定の付託は、法律に特別の定めがある場合を除いて、することができない(180条の6)。 ↩︎
- 参考:普通地方公共団体の常勤の職員は、監査委員を兼務することができない(196条3項)。 ↩︎
- 参考:都道府県および政令で定める市にあっては、識見を有する者のうちから選任される監査委員のうち少なくとも1人以上は、常勤としなければならない(196条5項)。 ↩︎
- 参考:監査委員は、自治事務・法定受託事務を問わず監査することができる(一定の除外事由あり)。 ↩︎
- 参考:外部監査人の監査を受ける場合であっても、従来の監査委員を廃止することはできない。 ↩︎