行政法25-2:地方公共団体の「執行機関」とは?

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執行機関とは?

地方自治法における執行機関とは、地方公共団体の事務を管理・執行する機関であって、自ら地方公共団体の意思を決定し外部に表示する権限を有するものをいい、行政組織法における行政庁に類似する。

地方公共団体には、執行機関として、法律の定めるところにより、行政委員会(行政委員)置かれる(138条の4第1項)。

地位

都道府県の長は都道府県知事、市町村の長は市町村長である(139条)。いずれも、住民の直接選挙で選任され(憲法93条2項)、任期は4年140条1項)。

権限

長は、以下の権限を有している。1

  • 地方公共団体の統轄・代表
    地方公共団体を統括し、これを代表すること(147条)。

  • 事務の管理・執行
    地方公共団体の事務を管理し、これを執行すること(148条)。

  • 担任事務
    1. 議会に議案を提出すること
    2. 予算を調製2し、これを執行すること
    3. 地方税を賦課徴収し、分担金・使用量・加入金・手数料を徴収し、過料をかすことなど(149条)。

補助機関

補助機関とは、長の職務を補助する機関のこと。補助機関には、長を補佐する副知事副市長村長と、地方公共団体の会計事務をつかさどる会計管理者などがある。

副知事は都道府県に、副市町村長は市町村に置かれ、定数は条例で定めるものとされている(条例で定めることにより置かないこともできる)(161条)。3

一方、会計管理者は、都道府県・市町村ともに必ず1人置かなければならないとされている(168条1項)。4

行政委員会(行政委員)とは?

行政委員会(行政委員)は、長から独立した地位と権限を有する執行機関であり、長への権力の集中を防止するために設けられたもの。複数の人間で構成される合議制の機関の場合は行政委員会、1人の人間で構成される独任制の機関の場合は行政委員と呼ばれる。

都道府県・市町村には、以下のような行政委員会(行政委員)を置かなければならない(180条の5)。

都道府県市町村
共通教育委員会
選挙管理委員会
人事委員会(または公平委員会)
監査委員
都道府県もしくは
市町村のみ必要
公安委員会
労働委員会
収用委員会
海区漁業調整委員会
内水面漁場管理委員会
農業委員会
固定資産評価審査委員会

行政委員会(行政委員)の権限

行政委員会5は、法律の定めるところにより、法令または普通地方公共団体の条例もしくは規則に違反しない限りにおいて、その権限に属する事務に関し、規則その他の規程を定めることができる(138条の4第2項)。

条例や長の規則との違いは次の通り。

権利の制限
義務の賦課
罰則根拠法
条例可能
14条2項
刑罰または過料
14条3項
地方自治法
長の規則不可過料のみ
15条2項
地方自治法
委員会の規則不可不可個別の法律による授権が必要(138条の4第2項

監督委員と外部監査

監査委員とは、地方公共団体の事務や会計の処理が適正に行われているかをチェックする機関のこと。この監査委員は、独任制の機関6

監査委員は、長が、議会の同意を得て、識見を有する者(人格が高潔で、普通地方公共団体の財務管理、事業の経営管理その他行政運営に関し優れた識見を有する者)および議員の中から選任する(196条1項本文)。7

監査委員の定数は、都道府県および政令で定める市にあっては4人、その他の市および町村にあっては2人とされているが、条例でその定数を増加することができる(195条2項)。

監査委員による監査には、自主的に行われる一般監査と、住民・議会・長からの請求・要求に基づいて行われる特別監査がある。8

①一般監査
財務監査
199条1項
財務・経営に関する監査
👉毎会計年度少なくとも1回以上期日を定めて行われる定例監査(199条4項)と、必要があると認めるときに行われる随時監査(199条5項)がある。
行政監査
199条2項
一般行政事務の事務に関する監査
👉必要があると認めるときに行われる。
②特別監査
  • 事務監査請求による監査(75条
  • 議会の請求による監査(98条2項
  • 長の要求による監査(199条6項
  • 財政的援助を与えているもの等に関する監査(199条7項
  • 住民監査請求による監査(242条

など

監査委員の監査とは区別されるものとして、外部監査人との契約による監査がある(外部監査制度)これは、地方公共団体におけるチェック機能を強化するために、外部の専門家が契約に基づいて行う監査のこと。9

外部監査制度には、包括外部監査制度個別外部監査制度の2種類がある。

包括外部監査制度個別外部監査制度
意味毎会計年度ごとに契約を締結し、外部監査人が自己の判断に基づき特定の事件を監査する制度議会・長などの請求・要求があった場合に、個別の事項ごとに契約を締結し、監査委員に代わって監査する制度
導入の義務都道府県、指定都市、中核市は必須
それ以外は条例により任意
条例によって任意
  1. 参考:長は執行機関相互の間にその権限の帰属につき疑義が生じたときは、これを調整するよう努めなければならない(138条の3第3項)。 ↩︎
  2. 調製:作成すること ↩︎
  3. 参考:副知事・副市町村長は長が議会の同意を得て選任する(162条)。 ↩︎
  4. 参考:会計管理者は、長がその補助機関である職員の中から任命する(168条2項)。 ↩︎
  5. 参考:行政委員会は、①予算の調製・執行、②議会に対する議案の提出、③地方税の賦課徴収、分担金・加入金の徴収、過料を科すこと、④決算の議会への認定の付託は、法律に特別の定めがある場合を除いて、することができない(180条の6)。 ↩︎
  6. 参考:普通地方公共団体の常勤の職員は、監査委員を兼務することができない(196条3項)。 ↩︎
  7. 参考:都道府県および政令で定める市にあっては、識見を有する者のうちから選任される監査委員のうち少なくとも1人以上は、常勤としなければならない(196条5項)。 ↩︎
  8. 参考:監査委員は、自治事務法定受託事務を問わず監査することができる(一定の除外事由あり)。 ↩︎
  9. 参考:外部監査人の監査を受ける場合であっても、従来の監査委員を廃止することはできない。 ↩︎
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