行政法25-3:議会と長の関係とは?

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首長主義

地方公共団体では、議会の議員も長も、ともに住民により直接選挙(憲法93条2項)されることから、首長主義が採用されているといえる。この首長主義の下では、議会と長が互いにけん制しあって職務を行うことが期待される。

例えば、議会と長の間に意見の対立が生じた場合、長は議会の議決や選挙を拒否して、再度の議決を求めることができる。これを長の拒否権という。

また、議会は長に対する不信任議決をすることができ、これに対して、長は議会を解散することができる。この点で、議院内閣制と同様の仕組みが採用されている。

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  theme: neutral
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flowchart LR
議会 ---->|不信任議決| 長
長 ---->|拒否権・解散| 議会

長の拒否権

長の拒否権には、議会に対して異議があれば任意に行使することができる一般的拒否権と、一定の要件を満たす場合に必ず行使しなければならない特別拒否権がある。そして、長が拒否権を行使する場合(議会の議決につき再議を要求する場合)、その理由を示さなければならない(176条1項177条)。

要件行使再度同じ議決がされた場合
一般的
拒否権
議会の議決について異議があるとき(176条1項任意条例・予算について異議があるときは、出席議員の3分の2以上の者の同意により、それ以外のときは、過半数の同意により、同じ議決がされた場合、その議決が確定する(176条2項・3項)
特別
拒否権
議会の議決・選挙がその権限を超えまたは法令・会議規則に違反すると認めるとき(176条4項義務審査の申立てができる(176条5項1
普通地方公共団体の義務に属する経費を削除し、または減額する議決をしたとき(177条1項1号義務その経費およびこれに伴う収入を予算に計上して支出できる(177条2項
非常の災害による応急・復旧の施設または感染症予防のために必要な経費を削除し、または減額する議決をしたとき(177条1項2号義務その議決を不信任の議決とみなすことができる(177条3項

長の不信任と議会の解散

初回の不信任議決

議会が長の不信任議決をするためには、議員数の3分の2以上の者が出席し、4分の3以上の者の同意がなければならない(178条3項)。

議長から不信任議決をした旨の通知を受けた長は、その通知を受けた日から10日以内に議会を解散することができる(178条1項)。

そして、長が議会を解散しなかった場合、長は、通知を受けた日から10日を経過した日に失職する(178条2項)。

再度の不信任議決

長が議会を解散し、解散後初めて招集された議会において再び不信任議決をするには、議員数の3分の2以上の者が出席し、その過半数の者の同意がなければならない(178条3項)。

また、長は、議長から再び不信任議決をした旨の通知があった日に失職する(178条2項)。

長の不信任と議会の解散フロー図

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  theme: neutral
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flowchart LR

初回の不信任議決["初回の不信任議決<br>・2/3以上出席<br>・3/4以上同意"]
再度の不信任議決["再度の不信任議決<br>・2/3以上出席<br>・過半数同意"]
初回の不信任議決 -->|10日以内| 議会の解散
議会の解散 -->|招集| 再度の不信任議決
再度の不信任議決 -->|通知| 長が失職
初回の不信任議決 -->|解散せずに<br>10日経過| 長が失職

専決処分

専決処分とは、①議会が成立しないとき、②所定の理由により定足数に達せずなお会議を開くことができないとき、③長において議会の議決すべき事件について特に緊急を要するため議会を招集する時間的余裕がないことが明らかであると認めるとき、④議会において議決すべき事件を議決しないときに、長が議会の議決すべき事件を処分することをいう(179条1項本文)。23

専決処分をした場合、長は、次の会議において専決処分をした旨を議会に報告し、その承認を求めなければならない(179条3項)。4

また、普通地方公共団体の議会の権限に属する軽易な事項で、その議決により特に指定したものについても、長は、専決処分をすることができる。この場合、議会への報告は必要だが、承認は不要(180条)。

長の議場への出席

議会の審議に必要な説明のため議長から出席を求められたときは、長は議場に出席しなければならない(121条1項本文)。ただし、出席すべき日時に議場に出席できないことについて正当な理由があり、その旨を議長に届け出たときは、出席しなくてもよいこととされている(121条1項但書)。

  1. 参考:創部大臣または都道留県知事は、審査の結果、議会の議決・選挙がその権限を超えまたは法令・会議規則に違反すると認めるときは、その議決・選挙を取り消す旨の裁定をすることができ(176条6項)、その裁定に不服があるときは、議会または長は、最低のあった日から60日以内に裁判所に出訴することができる(176条7項)。 ↩︎
  2. 参考:専決処分をすることができるのは長のみであり、行政委員会(行政委員)は、専決処分をすることができない。 ↩︎
  3. 参考:副知事・副市町村長、指定都市の総合区長の選任は、専決処分の対象から除外されている(179条1項但書)。 ↩︎
  4. 参考:条例・予算の専決処分について議会が不承認としたときは、長は、必要と認める措置を講じ、議会に報告しなければならない(179条4項)。 ↩︎
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