目次
事案
労働組合は、脱退した旧組合員らに対し、未納の臨時組合費の支払いを請求した。そこで、旧組合員らは、この臨時組合費には、安保反対闘争に参加して処分を受けた組合員の救援資金が含まれており、労働組合の政治的活動に関係するものであるから、納付義務は認められないとして争った。
結論

旧組合員らの納付義務は認められる。
判旨
- ①労働者の権利利益に直接関係する活動に関する費用負担の可否
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労働者の権利利益に直接関係する立法や行政措置を促進し、またはこれに反対する活動は、政治活動としての一面をもち、組合員の政治的思想・見解等とも無関係ではないが、労働組合の目的の範囲内の活動とみることができるので、組合費に費用負担などを求めることも許される。
- ②安保反対闘争に関する費用負担の可否
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安保反対といった政治的要求への賛否は、本来、各人が国民の1人として決定すべきことであるから、安保反対闘争のため組合員に費用負担を求めることは許されない。
しかし、安保反対闘争に参加して不利益処分を受けた組合員の生活等の経済的援助・救援は、組合員に対する共済活動として当然に許されるのであって、そのための費用の拠出を強制しても、直ちに処分の原因たる政治的活動に積極的に協力することになるわけではないから、費用負担を求めることも許される。
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