目次
事案
奈良県では、ため池の破損・決壊等による災害を未然に防止するため、ため池の堤とうに農作物を植える行為等を禁止する条例が制定されたが、以前から堤とうを耕作してきた被告人が条例制定後も耕作を続けたため条例違反で起訴された。そこで、条例による財産権の制限が憲法29条2項に違反しないかが争われた。
結論

合憲。
判旨
- ①ため池条例の合憲性
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堤とうを使用する権利を有する者の財産権行使がほとんど全面的に禁止されることとなるが、それは災害を未然に防止するという社会生活上やむを得ない必要から来ることであって、堤とうを使用する財産上の権利を有する者は何人も、公共の福祉のため当然これを受忍しなければならないものであるから、ため池の破損・決壊の原因となる堤とうの使用行為は、憲法・民法の保障する財産権のらち外にあり、これらも条例で禁止・処罰しても、憲法および法律に抵触も逸脱もしない。
- ②損失補償の必要性
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本条例も、災害を防止し公共の福祉を保持する上で社会生活上やむを得ないものであり、財産権を有する者が当然受忍しなければならない責務というべきものであって、29条3項の損失補償はこれを必要としない。
- ③ため池の保全を条例で定めることの可否
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事柄によっては、国において法律で一律に定めることが困難または不適当なことがあり、その地方公共団体ごとに条例で定めることが容易かつ適切であり、ため池の保全の問題は、まさにこの場合に該当する。
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