- 「地方公共団体って具体的に何があるの?」と疑問に感じている方
- 普通地方公共団体と特別地方公共団体の違いを覚えたい行政書士受験生
- 地方自治法の基本をしっかり押さえて得点源にしたい方
地方公共団体とは?【まずはざっくり定義から】
地方公共団体とは、私たちが暮らす地域の行政を担う自治体のこと。
行政書士試験では、これらを「普通地方公共団体」と「特別地方公共団体」に分けて理解する必要があります。
この記事では、それぞれの違いや役割について、わかりやすく解説していきます!
地方自治法とは?制定の背景もチェック!
地方自治法制定の経緯
地方自治法は、日本国憲法第8章「地方自治」に基づいて、1947年(昭和22年)に制定された法律です。
旧憲法(大日本帝国憲法)には地方自治の規定がなかったため、日本国憲法の制定により、はじめて地方自治に法的な根拠が与えられました。

地方自治法の目的は?【1条に注目】
地方自治法の目的は、次のように定められています。
この法律は、地方自治の本旨に基いて、地方公共団体の区分並びに地方公共団体の組織及び運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保をを図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的とする。
地方自治法第1条
この目的の中で特に重要なキーワードが、「地方自治の本旨」です。
これは「住民自治」と「団体自治」の2つの原則を意味します(明文の規定はなし)。
地方公共団体の種類【覚えるべき2分類】
地方公共団体は、地方自治法第1条の3第1項により、以下の2つに大別されます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
普通地方公共団体【都道府県と市町村】
普通地方公共団体には、以下の2つが含まれます(1条の3第2項)。
- 都道府県
- 市町村
市町村は、住民に最も身近な「基礎的自治体」として、地域密着の行政サービスを担当します(2条3項)。
一方、都道府県は市町村を含む広域自治体として、広域的な観点から行政サービスや市町村の支援を行います(5条2項)。1
【補足】大都市等に関する特例とは?
本来、都道府県が担当すべき事務でも、「一定の規模を持つ市」であれば、自ら処理できる制度があります。これが「大都市等に関する特例」です。これは、地方分権の推進のため、住民に身近な行政はできる限り住民にとって身近な市に委ねるべきとの考えから定められています。
この特例が認められている市には、次の2種類があります。
- 指定都市(政令指定都市)
- 中核市
■指定都市と中核市の詳細
指定都市 | 中核市 | |
---|---|---|
意味 | 政令で指定する人口50万人以上の市 | 政令で指定する人口20万人以上の市 |
処理する事務 | 都道府県が処理することとされている事務の全部または一部(252条の19第1項) | 指定都市が処理することができる事務のうちの一部(252条の22第1項) |
区の設置 | 義務(252条の20第1項)※1 ※2 | 不可 |
関係市の申出 | 不要 | 必要(252条の24第1項)※3 |
※1 指定都市の設置する区は、行政区にすぎず、法人格を有しない。
※2 指定都市は、必要と認めるときは、条例で区地域協議会を置くことができる(252条の20第7項)。
※3 市が中核市の指定の申出をしようとする場合、あらかじめ議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない(252条の24第2項)。
特別地方公共団体【普通の自治体では処理できない事務を担当】
特別地方公共団体とは、普通地方公共団体だけでは対応が難しい事務を処理するために、特別に設けられた自治体です(1条の3第3項)。
種類は以下の3つです。
- ①特別区(東京23区)
-
東京都に設置されている23区を指し、実質的には市町村と同じような役割を持つ。
- ②地方公共団体の組合
-
地方公共団体の組合とは、複数の地方公共団体が事務を共同でするために設置する団体。2
地方公共団体の組合は、一部事務組合と広域連合の2種類に分類される(284条1項)。
一部事務組合3 普通地方公共団体(市町村・都道府県)および特別区が、その事務の一部を共同して処理するために設置する団体 広域連合 普通地方公共団体および特別区が、広域にわたる総合的な計画を作成し、その事務の一部を計画的に処理するために設置する団体 - ③財産区
-
財産区とは、市町村または特別区の一部が財産を有している場合などに、その管理や処分を目的として設置される団体のこと(294条)。
✅地方公共団体の種類のまとめ
--- config: theme: neutral --- flowchart LR 地方公共団体 --> 普通地方公共団体 普通地方公共団体 --> 都道府県 普通地方公共団体 --> 市町村 地方公共団体 --> 特別地方公共団体 特別地方公共団体 --> 特別区 特別地方公共団体 --> 地方公共団体の組合 地方公共団体の組合 --> 一部事務組合 地方公共団体の組合 --> 広域連合 特別地方公共団体 --> 財産区
まとめ|地方公共団体の違いを押さえて得点源に!
分類 | 名称 | 主な内容 |
---|---|---|
普通地方公共団体 | 都道府県、市町村 | 一般的な自治体。住民に最も身近な行政を担当 |
特別地方公共団体 | 特別区、地方公共団体の組合、財産区 | 特別な目的で設置される自治体 |
行政書士試験では、「普通地方公共団体」と「特別地方公共団体」の違いがよく問われます。
特に、「どんな種類があるか」「どんな役割を持っているか」を正確に押さえておくことが重要です!
- 参考:従来、市町村は、その事務を処理するに当たり、議会の議決を経て、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想をさだめなければならないとされていたが、この規定は削除された。 ↩︎
- 具体例:地方公共団体の事務として消防活動があるが、1つの地方公共団体では、高性能の消防車を購入するのは費用面の負担が大きいことと、大規模な火災が発生した場合に人手が足りない事態も想定できることから、消防活動を他の地方公共団体と共同で行うため、地方公共団体の組合を設置する場合など ↩︎
- 参考:一部事務組合には議会が設置されるので(287条1項5号)、その独自の条例が制定されることがある(292条、96条1項1号)。 ↩︎