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事案
宝塚市パチンコ店規制条例に違反してパチンコ店の建築工事に着手した者に対し、宝塚市長がパチンコ店の建築工事中止命令を発したにもかかわらず、これを無視して建築工事が続けられたため、宝塚市長が、工事の続行禁止を求める民事訴訟を提起した。
結論

訴えの却下
判旨
国または地方公共団体が提起した訴訟であって、財産権の主体として自己の財産上の権利利益の保護救済を求めるような場合には、法律上の争訟に当たるというべきであるが、国または地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、法規の適用の適正ないし一般公益の保護を目的とするものであって、自己の権利利益の保護救済を目的とするものということはできないから、法律上の争訟として当然に裁判所の審判の対象となるものではなく、法律に特別の規定がある場合に限り、提起することが許されるものと解される。
そして、行政事件訴訟法その他の法律には、一般に国または地方公共団体が国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟を提起することを認める特別の規定は存在しない。
したがって、国または地方公共団体が専ら行政権の主体として国民に対して行政上の義務の履行を求める訴訟は、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たらず、これを認める特別の規定もないから、不適法というべきである。