行政法4-2:行政上の強制執行とは?代執行・執行罰・直接強制・行政上の強制徴収の違いと手続をわかりやすく解説

🎯この記事はこんな人におすすめ
  • 行政書士試験で「行政上の強制措置」がよく分からない方
  • 「代執行」「執行罰」「直接強制」「強制徴収」の違いを整理したい方
  • 本試験に向けて、行政代執行法などの基本を効率的に押さえたい方
目次

行政上の強制執行とは?4つの手段を総まとめ!

行政行為や行政命令により国民に義務が課されたとしても、実際に国民が従わなければ行政目的は達成できません。そこで、行政機関には必要に応じて国民に対して強制力を行使し、義務の履行があったのと同じ状態を実現させる仕組みが認められています。このような仕組みを「行政上の強制執行」といいます。

中でも「行政上の強制執行」は、国民が義務を果たさない場合に行政機関が強制的に義務の履行を実現する制度です。これは国民の権利義務に重大な影響を与えるため、必ず法律の根拠が必要になります(法律による行政の原理法律の留保の原則)。

行政上の強制執行には、次の4つの方法があります。

区分内容
① 代執行行政が本人に代わって義務を実施し、費用を請求
② 執行罰義務を果たさない場合に過料でプレッシャーをかける
③ 直接強制行政が直接的に身体・財産へ有形力を行使する
④ 行政上の強制徴収義務者の財産から直接金銭を取り立てる

※注意:行政上の強制執行は、民事訴訟のように裁判所の力を借りるのではなく、行政庁が自ら行う必要があります。

🔍重要判例:最判平14.7.9(宝塚市パチンコ店規制条例事件)

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
 行政上の強制措置(行政上の<br>強制措置)--将来-->行政強制(行政強制)
 行政強制--義務の不履行あり-->行政上の強制執行(行政上の強制執行)
 行政上の強制執行-->代執行(代執行)
 行政上の強制執行-->執行罰(執行罰)
 行政上の強制執行-->直接強制(直接強制)
 行政上の強制執行-->行政上の強制徴収(行政上の強制徴収)
 行政強制--義務の不履行なし-->即時強制(即時強制)
 行政上の強制措置--過去-->行政罰(行政罰)
 行政罰--重い-->行政刑罰(行政刑罰)
 行政罰--軽い-->秩序罰(秩序罰)

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 click 直接強制 "https://gs.kabudata-dll.com/gh4-2/#直接強制"
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代執行とは?〜行政代執行法に基づく手続き〜

代執行とは、本人が行うべき作業のうち、代替的作為義務1を履行しない場合に、行政機関(または第三者に)が本人に代わってその義務を履行し、その費用を義務者から徴収する手続きです。2

代執行を含めた行政上の義務の履行確保については、別に法律で定めるものを除いては、行政代執行法の定めるところによります。(行政代執行法1条3

代執行の要件(行政代執行法2条)

次の4つの要件すべてを満たす必要があります(行政代執行法2条

代替的作為義務が履行されていないこと
②義務が法律(法律の委任に基づく条例含む)または法律に基づき行政庁により命ぜられたものであること
他の方法では履行確保が困難であること4
不履行のままでは著しく公益に反すること

手続の流れ

代執行の手続きは、以下の手順で行われます。5

戒告・通知

相当の履行期限を設けた上で、その期限までに履行がなければ文書により「代執行をなすべき旨」を戒告3条1項)。その後も履行されない場合には「代執行令書」で通知します(3条2項)。

代執行の実施

執行責任者が証票を携帯し(4条)、要求があれば何時でもこれを呈示しなければなりません。

費用の徴収

かかった費用・その納期日を定めて義務者に文書で納付を命じ(5条)、国税滞納処分の例により徴収されます(6条1項)。

執行罰とは?〜くり返し使える過料の制裁〜

執行罰とは、行政上の義務を自発的に履行させるために、履行しない場合には過料(刑罰ではない制裁金)を科すことを予告し、それでも履行されない場合に実際に過料を徴収する制度です。

執行罰は刑罰ではないため、繰り返し課すことが可能です(憲法39条二重処罰を禁止には抵触しない)。

直接強制とは?〜行政が直接、有形力を行使〜

直接行政とは、義務者が義務を履行しない場合に、行政機関が直接、身体・財産に有形力を行使して義務の内容を実現する方法です。6

即効性が高く効果的ですが、人権制約のリスクが高いため、一般的な制度としては認められておらず、必ず個別の法律の根拠が必要です。

行政上の強制徴収とは?〜金銭的義務の強制回収〜

行政上の強制徴収とは、金銭的な義務が履行されない場合に、行政機関が義務者の財産から直接金銭を取り立てる手続きです。

  • 原則として、国税の強制徴収は「国税徴収法」に基づいて行われます。
  • ただし、国税以外の金銭債権(例:行政手数料など)に国税徴収法の手続きを使うためには、「国税滞納処分の例による」という明文の法律規定が必要です(行政代執行法6条1項など)。

✏️まとめ|それぞれの違いをしっかり整理!

区分主な目的方法法的根拠
代執行代わりに義務を履行行政機関が作業を代行行政代執行法
執行罰自主的な履行促進過料の予告・徴収個別法の定め
直接強制即座の実現有形力の行使必ず個別法が必要
強制徴収金銭の取り立て財産から直接徴収国税徴収法など

行政上の強制執行は、行政が法令や命令に従って国民に義務を強制的に履行させる手段です。試験でもよく問われるため、それぞれの制度の要件・手続・違いを明確に覚えておきましょう

  1. 第対席作為義務:他人が代わってなすことができる行為を内容とする義務のこと ↩︎
  2. 具体例:違法な建築物が建っていた場合、行政庁がこの建築物を取り壊し、持ち主に取り壊しにかかった費用の支払いを請求する場合など ↩︎
  3. 参考:行政代執行法1条は条例を挙げていないことから、条例を根拠として行政上の強制執行はできない ↩︎
  4. 参考:行政罰は直接的には義務の履行を確保する手段ではないから「他の手段」に当たらず、行政罰の規定があったとしても、代執行をすることができる ↩︎
  5. 行政代執行法所定の戒告・通知について、義務者が審査請求を行うことができる旨の規定は、行政代執行法には特に置かれていない。 ↩︎
  6. 具体例:成田新法による建物の実力封鎖など ↩︎
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