民法24-1:実子

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実子の種類

実子は、婚姻関係にある男女の間に生まれた「嫡出子(ちゃくしゅつし)」と、婚姻関係にない男女の間に生まれた「非嫡出子」に分類されます。

嫡出の推定について

①妻が再婚をしていない場合

次のいずれかに該当する子は、現在の婚姻における夫の子、すなわち嫡出子であると推定されます(772条1項・2項)。

  • 女性が婚姻前に懐胎し、婚姻が成立した後に生まれた子
    →婚姻の成立から200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定されます。

  • 妻が婚姻中に懐胎し、その後に生まれた子
    →婚姻の成立から200日を経過後、または婚姻の解消・取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したと推定されます。
②妻が再婚をした場合

女が子を懐胎したときから子の出生の時までの間に2以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定される(772条3項)。

③推定の及ばない子

嫡出の推定を受け得る時期に出生した子であっても、懐胎時に夫婦間で性的関係を持つ機会がなかったことが明らかである場合には、嫡出の推定は及ばないとされています。このような子を「推定の及ばない子」といいます。1

嫡出の否認

嫡出の推定を受ける子については、「嫡出否認の訴え」によって、その子が嫡出であることを否認することができます(774条)。2

これに対して、推定の及ばない子非嫡出子の場合には、「親子関係不存在確認の訴え」によって、父子関係が存在しないことを確認する手続きを取ることができます。

嫡出否認の訴え親子関係不存在確認の訴え
提訴権者父、子、母(774条1項・2項利害関係人
提訴期間父が提起:父が子の出生を知った時から3年以内(777条1号
子、母が提起:子の出生の時から3年以内(777条2号・3号
前夫が提起:前夫が子の出生を知った時から3年以内777条4号
制限なし
相手方父が提起:子、親権を行う母(775条1項1号
子、母が提起:父(775条1項2号・3号
前夫が提起:父、子、親権を行う母(775条1項4号
※親権を行う母がいないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない(775条2項
親子関係の存在を主張する者

実子の種類と嫡出を否認する方法についてまとめると、次の通りになります。

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config:
  theme: neutral
---
flowchart LR
実子 --> 嫡出子
嫡出子 --> 嫡出の推定を受ける子
嫡出子 --> 推定の及ばない子
実子 --> 非嫡出子

subgraph 嫡出否認の訴え
 嫡出の推定を受ける子
end


subgraph 親子関係不存在確認の訴え
 推定の及ばない子
 非嫡出子
end

認知について

認知とは、非嫡出子に対して、その父または母との間に親子関係を成立させる制度です(779条)。3

任意認知

任意認知は、父または母が行う意思表示によって成立します。未成年者成年被後見人であっても、認知をする際に法定代理人の同意は必要ありません(780条)。

任意認知は、戸籍法に基づく届出によって行うか(781条1項)、遺言によって行うこともできます(781条2項)。4

なお、以下の場合には、認知される側の承諾が必要となります。

  • 成年の子:その子の承諾が必要(782条
  • 胎児:母の承諾が必要(783条1項
  • 死亡した子:直系卑属があるときに限り認知することができ、その直系卑属が成年者であるときは、その承諾が必要(783条3項

任意認知の効力は、出生の時に遡って効力を生じますが、第三者が既に取得した権利を害することはできません(784条)。

認知の訴えについて

子、その直系卑属、またはこれらの者の法定代理人は、「認知の訴え」を提起することができる(787条本文)。5

この訴えは、父が生存している限りいつでも行うことができます。ただし、父または母が死亡した場合、その日から3年を経過すると、訴えを提起することはできなくなります(787条但書)。

準正

準正とは、嫡出でない子に嫡出子としての地位を与える制度です。

たとえば、父が認知した子について、その父母が後に婚姻した場合、その子は準正によって嫡出子の身分を取得します(789条1項)、婚姻中父母が認知した子は、その認知の時から、嫡出子の身分を取得します(789条2項)。

  1. 重要判例:懐胎時に、夫婦が事実上の離婚状態であった場合(最判昭44.5.29)、夫が出征中であった場合(最判平10.8.31)、夫が刑務所に収容されていた場合は、嫡出の推定は及ばない。 ↩︎
  2. 参考:令和2年に生殖補助医療法が制定され、妻が夫の同意を得て、夫以外の男性の精子を用いた生殖補助医療により懐胎した子については、夫、子、妻は、その子が嫡出であることを否認できないとされた(10条)。 ↩︎
  3. 法改正:令和4年の民法改正により、認知について反対の事実を主張する場合には、認知の無効の訴えを提起することとされ、提訴権者と出訴期間が制限されることとなった。 ↩︎
  4. 重要判例:妻以外の女性との間にもうけた子につき、妻との間の嫡出子として出生の届出をし、受理されたときは、その届出は認知届としての効力を有する(最判昭53.2.24) ↩︎
  5. 重要判例:認知請求権は放棄することができない(最判昭37.4.10) ↩︎
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