🔸この記事はこんな人におすすめ
- 「無効」と「取消し」の違いが覚えられない方
- 行政書士試験で民法の基礎をしっかり理解したい方
- 過去問で「無効」や「取消し」の問題に悩んだことがある方
- 覚えるだけでなく、意味まで理解して整理したい方
目次
「無効」と「取消し」の違いを正しく理解しよう
民法では、一見似ているけれど意味がまったく異なる概念として「無効」と「取消し」があります。
試験では混同しやすいポイントなので、定義・効果・誰が主張できるかをしっかり押さえておきましょう。
無効とは?──最初から効力なし!
無効とは、法律行為が客観的に見て法的な効力を持つにふさわしくない場合を指します。たとえ見た目には契約が成立しているように見えても、法的には「なかったこと」として扱われます。
無効行為の追認はできる?
無効な行為は、追認をしても効力が発生しません(119条)。
ただし、当事者が無効であることを認識した上で追認した場合には、新たに法律行為をしたものとみなされます(119条但書)。

取消しとは?──一度有効→後から遡って無効
取消しとは、一度は有効に成立した法律行為を、後から、行為の時に遡って「初めから無効」であったものとみなす行為のことをいいます(121条)。
ただし例外もあります。
✅ 例外:婚姻の取消し → 将来に向かってのみ効力を失います(748条1項)。
取消権者とは?──誰が取り消せるの?
取消しを行うことができるのは、以下の者に限られています。
取消しの効果とは?
取消された行為は、初めから無効であったものとみなされます(121条)。また、無効な行為に基づいて利益を受けた者は、相手方を原状に復させる義務(原状回復義務)を負います(121条の2第1項)。
✅ ただし例外あり
取消しうる行為は追認できる
取り消すことができる行為は、取消権者が追認すると、それ以降は取消しができなくなります(122条)。
この追認は、取消しの原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後でなければ有効にはなりません(124条1項)。
法定追認とは?
明確に「追認します」と言わなくても、以下のような行為をした場合には、法律上「追認があった」とみなされます。
追認をすることができる時以後に、以下の行為が行われた場合は、追認があったものとみなされる(法定追認)(125条)。
- 全部または一部の履行
- 履行の請求
- 更改
- 担保の供与
- 取り消すことができる行為によって取得した権利の譲渡
- 強制執行
まとめ:違いを比較して覚えよう!
無効 | 取消し | |
効果 | 行為の当初から効力が生じない(119条本文) | いったん効力が生じるが、取消しにより行為の時に遡って効力が生じなかったことになる(121条) |
追認 | 当事者が無効であることを知って追認したときは、新たな行為をしたものとみなされる(119条但書) | 行為の当初から有効であることが確定する(122条) |
権者 | 主張原則として誰からでも主張することができる | 取消権者のみ主張することができる(120条) |
期間 | 主張制限なし | 追認をすることができる時から5年間または行為の時から20年間行使しないときは、取消権が時効によって消滅する(126条) |