目次
養子
養子は、実方の血族との間の親族関係が消滅しない「普通養子」と、実方の血族との間の親族関係が消滅する「特別養子」があります。
普通養子縁組
- ①縁組の無効・取消し
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縁組が有効となるためには、当事者双方に縁組をする意思があることそして、当事者が縁組の届出を行うことが必要です。いずれかが欠けている場合には、その縁組が無効となります(802条)。1
また、以下の規定に違反した縁組については、取り消すことができます(804~808条)。
■普通養子縁組の要件
- 養親が20歳に達していること(792条)
- 尊属または年長者を養子としないこと(793条)
- 後見人が被後見人を養子とするには家庭裁判所の許可を得ること(794条)
- 配偶者のある者が成年者と縁組をするには、その配偶者の同意を得ること(配偶者とともに縁組をする場合または配偶者が意思表示できない場合を除く(796条)2
- 未成年者を養子とするには家庭裁判所の許可を得ること(自己または配偶者の直系卑属を養子とする場合除く)(798条)
また、詐欺または強迫によって縁組をした場合には、その当事者は縁組の取消しを請求することができます(808条1項、747条1項)。
- ②代諾縁組
特別養子縁組
普通養子縁組が成立しても、実の親やその血族との親族関係は当然には消滅しません。しかし、子の福祉の観点からは、実方との関係を消滅させた方が望ましいとされる場合もあります。
そこで民法は、実の親やその血族との親族関係を終了させる「特別養子縁組」の制度を設けています(817条の2第1項)。
この特別養子縁組については、その成立要件・法的効果・離縁について、普通養子縁組とは異なる特別な規定が設けられています。
普通養子縁組と特別養子縁組の比較は次の通りです。
普通養子縁組 | 特別養子縁組 | |
成立要件 | 当事者間の合意(802条1号) 届出(802条2号) | 養親となる者の請求(817条の2第1項) 家庭裁判所の審判(817条の2第1項) 子の利益のため特に必要があると認めるとき(817条の7) |
養親の資格 | 20歳に達していること(792条) 養子が未成年者である場合、原則、夫婦共同縁組が必要(795条) | 原則、夫婦共同縁組(817条の3第1項・2項) 夫婦いずれも20歳以上で、かつ、そのいずれかは25歳以上(817条の4) |
養子の資格 | 養親の年長者・尊属でないこと(793条) | 原則、審判請求時に15歳未満(817条の5第1項) |
父母の同意 | 不要 | 原則、必要(817条の6) |
試験養育期間 | 不要 | 6カ月以上(817条の8) |
効果 | 養子と実方の父母およびその血族との親族関係は終了しない | 原則、養子と実方の父母およびその血族との親族関係は終了する(817条の9) |
離縁 | 原則、自由になしうる | 原則、なし得ない(817条の10) |
- 重要判例:真実の親子関係がない親から嫡出子として出生の届出がされている場合でも、その届出を養子縁組の届出とみなすことはできない(最判昭25.12.28) ↩︎
- 参考:配偶者のある者が未成年者と縁組をするには、配偶者と共に縁組をしなければならず(配偶者の嫡出子を養子とする場合または配偶者が意思表示できない場合を除く)(795条)、これに違反した縁組は、届出が受理されないことになる。 ↩︎
- 重要判例:真実の親子関係がない戸籍上の親が15歳未満の子について代諾による養子縁組をした場合には、その代諾による縁組は一種の無権代理によるものであるから、その子は、15歳に達した後はその縁組を追認することができる(最判昭27.10.3) ↩︎