行政法16-5:執行停止(行訴法)とは?わかりやすく解説|要件・手続・内閣総理大臣の異議まで完全対応!

この記事はこんな人におすすめ
  • 「執行停止」の仕組みや流れをイメージで理解したい方
  • 行政事件訴訟法の条文を読んでも、具体的にどう使われるのかピンとこない方
  • 行政不服審査法との違いや、仮の義務付けとの違いも押さえておきたい方
  • 行政書士試験の頻出ポイントを押さえて、効率的に得点したい受験生の方
目次

✅執行停止とは?

行政事件訴訟法では、取消訴訟を起こして審理中だとしても、原則として処分の効力は止まりません。これを「執行不停止の原則1といいます(25条1項)。

でもこのままでは、取消訴訟の審理中に処分が進行してしまい、後日請求が認容(認められても)されても手遅れになることも…。さらに、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法に規定する仮処分2の方法により救済を求めることができません。

そのため、原告の権利を守る緊急措置として、一定の要件を満たす場合に処分の効力処分の執行手続の続行の全部または一部の停止をする「執行停止」が認められます。3

つまり、執行停止は『裁判所による仮のストップボタン』のような制度です。
なお、執行停止の内容は、行政不服審査法におけるものと同様。👉行政不服審査法:執行停止

✅執行停止の要件とは?【3つの条件を覚えよう】

執行停止が認められるためには、次の3つの要件を満たす必要があります25条2項

  1. 取消訴訟が適法に提起されていること4
  2. 重大な損害を避けるため緊急の必要があること
  3. 原告からの執行停止の申立てがあること5

ただし、以下のような場合は執行停止は認められません25条4項

  • 公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき
  • 本案6(取消訴訟の主張)理由がないとみえるとき

✅執行停止の手続とその後

  • 執行停止の手続:
    執行停止の決定は、口頭弁論なしでもOKですが、当事者の意見を聞く必要があります(25条6項)。

  • 執行停止の取消し
    執行停止の決定後に事情が変わった場合は、相手方の申立てにより、裁判所が決定をもって取消すこともできます26条1項)。

✅内閣総理大臣の異議とは?【行政の最終防衛ライン】

裁判所の執行停止が、行政運営を不当に妨げるおそれがあるとき、内閣総理大臣は「異議」を述べることができます27条1項)。この場合、裁判所は執行停止をできず(裁判所に審査権限はない)、すでに決定していた場合でも取り消さなければなりません27条4項)。

内閣総理大臣の異議は、執行停止の決定をした裁判所(その決定に対する抗告が抗告裁判所に係属しているときは、抗告裁判所)に対して述べなければなりません(27条5項)。

ただし、「やむをえない場合」に限られ、異議を述べたときは次の次の常会において国会にこれを報告しなければならないとされています(27条6項)。
この仕組みにより、司法と行政のバランスが取られているのです。

✅行政不服審査法との比較|どう違う?

行政不服審査法行政事件訴訟法
審査庁が「処分庁の上級行政庁」or「処分庁」審査庁が「処分庁の上級行政庁」「処分庁」以外
職権による執行停止可能×不可×不可
処分場の意見聴取×不要必要必要
執行停止の義務ありあり×なし
行える措置処分の効力・執行・手続の続行の停止以外の措置も可能7処分の効力・執行・手続の続行の停止以外の措置のみ
内閣総理大臣の異議×不可可能

✅仮の義務付け・仮の差止めとの違い

執行停止仮の義務付け・仮の差止め
要件取消訴訟を提起したこと
重大な損害を避けるため緊急の必要があること
執行停止の申立てをしたこと
(25条2項)
義務付け訴訟差止め訴訟を提起したこと
償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があること
仮の義務付け・仮の差止めの申立てをしたこと
本案について理由があるとみえること

(37条の5第1項・2項)
できない場合公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき(25条4項)
本案について理由がないとみえるとき
公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあるとき(37条の5第3項
内閣総理大臣の異議可能(27条可能
(37条の5第4項により27条を準用)

まとめ:執行停止は「仮の盾」

執行停止は、取消訴訟中の原告を保護するための仮の盾
ただし、公共の福祉や行政運営への影響にも配慮し、裁判所と行政のバランスのもとで運用されます。

行政書士試験では、「要件」「できない場合」「手続」「内閣総理大臣の異議」がよく問われるポイント。
条文の番号(25条26条27条)も一緒に押さえておくと、得点アップにつながります!

  1. 参考:無効等確認訴訟においても、執行停止に関する規定が準用されている(38条3項↩︎
  2. 仮処分:権利者が強制執行によって満足を得るまでの期間、義務者の財産を確保するための手段のこと ↩︎
  3. 参考:処分の効力の停止は、処分の執行の停止または手続の続行の停止によって目的を達することができる場合には、することができない(25条2項但書↩︎
  4. 参考:執行停止の申立ては、必ずしも本案訴訟の提起と同時にする必要はなく、それ以後にすることも差し支えない。 ↩︎
  5. 参考:申請拒否処分について執行停止をなしたとしても、申請拒否処分がなされる前の状態に戻るだけである ↩︎
  6. 本案:付随的・派生的な事項ではなく、その手続の主目的という意味 ↩︎
  7. 参考:「処分の効力・執行、手続の続行の停止以外の措置」とは、営業許可取消処分に代えて一定期間の営業停止処分に変更するなど ↩︎
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