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事案
大学卒業後、三菱樹脂株式会社に採用された者が、在学中の学生運動歴について入社試験の際に虚偽の申告をしたという理由で、使用期間終了時に本採用を拒否された。そこで、特定の思想を有することを理由に本採用を拒否することが憲法に違反しないかが争われた。
結論

違反しない(間接適用説)。
判旨
- ①人権想定の私人間への適用
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憲法の自由権的基本権の保障規定は、専ら国または公共団体と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律することを予定するものではない。
私人間の関係においても、相互の社会的力関係の相違から、一方が他方に優越し、事実上後者が前者の意思に服従せざるを得ない場合があるが、このような場合でも、憲法の基本権保障規定の適用ないし類推適用を認めるべきではない。 - ②思想・信条の調査の可否
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企業が、労働者の採否決定に当たり、労働者の思想・信条を調査し、そのためその者からこれに関連する事項についての申告を求めることも違法ではない。
- ③思想・信条を理由とする雇用の拒否
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企業者が特定の思想・信条を有する者をそれを理由として雇い入れることを拒んでも、それを当然に違法としたり、直ちに民法上の不法行為とすることはできない。
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