行政法29-2:係争処理

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国と地方公共団体の間の係争処理

国と地方公共団体が相互対等な関係にある以上、国の関与において、国と地方公共団体の間で対立が生じた場合、公平・中立な立場から審査を行う機関が必要となる。そこで、総務省に国地方係争処理委員会が設置されている(250条の7第1項)。1

審査の申出

地方公共団体の長その他の執行機関は、国の関与に不服があるときは、国地方係争処理委員会に対して、文書で審査の申出をすることができる(250条の13第1項~3項)。2

審査後の手続

国地方係争処理委員会は、審査の申出に係るものが自治事務である場合、関与違法または不当と認めるときに、審査の申出に係るものが法定受託事務である場合、関与が違法と認めるときに、国の行政庁に対して、理由を付し、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告し、その内容を地方公共団体の長その他の執行機関に対して通知し、公表する(250条の14第1項・2項

一方、関与が適法かつ妥当と認める時は、国の行政庁と地方公共団体に対して、理由を付して通知し、公表する(250条の14第1項・2項

国の関与に関する訴え

国地方係争処理委員会の審査の結果に不服がある地方公共団体は、高等裁判所に出訴することができる(251条の5第1項)。このように、国の関与に関する訴えは、審査の申出をした後でなければ提起することができない(これを審査申出前置主義という)。

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config:
  theme: neutral
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flowchart TB
 subgraph 係争
  国の行政庁
  地方公共団体
 end
国の行政庁 -->|①関与| 地方公共団体
地方公共団体 -->|②審査の申出| 国地方係争処理委員会
国地方係争処理委員会 -->|③審査| 国地方係争処理委員会
国地方係争処理委員会 -->|④通知| 地方公共団体
国地方係争処理委員会 -->|④勧告or通知| 国の行政庁
地方公共団体 -->|⑤出訴|高等裁判所

地方公共団体間の係争処理

普通地方公共団体相互(都道府県と市町村)も対等の関係にあるため、都道府県と市町村の間で対立が生じた場合も、国と地方公共団体の間の紛争処理手続に準じて、自治紛争処理委員による審査の制度が用意されている(251条)。3

審査の申出

市町村長その他の執行機関は、都道府県の関与に不服があるときは、総務大臣に対して、自治紛争処理委員の審査に付する旨の申出をすることができる。そして、審査の申出を受けた総務大臣は、自治紛争処理委員を任命し、これを審査に付す(251条の3第1項~3号)。4

審査後の手続

自治紛争処理委員は、国地方係争処理委員会と同様の措置をとることになる(251条の3第5項250条の14第1項)。

都道府県の関与に関する訴え

自治紛争処理委員の審査の結果に不服がある市町村は、高等裁判所に出訴することができる(251条の6第1項)。

  1. 参考:国地方係争処理委員会の議員は、総務大臣が両議院の同意を得て任命する(250条の9第1項)。 ↩︎
  2. 参考:国地方係争処理委員会による審査の対象となる関与は、①是正の要求。許可の拒否その他国の公権力の行使に当たるもの、②国の不作為、③協議が調わないとき。 ↩︎
  3. 参考:自治紛争処理委員は、事件ごとに総務大臣または都道府県知事が任命する(251条2項前段)。 ↩︎
  4. 自治紛争処理委員による審査の対象となるのは、①是正の要求、許可の拒否その他都道府県の公権力の行使に当たるもの、②都道府県の不作為、③協議が調わないとき ↩︎
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