- 行政書士試験で「係争処理」に関する出題に備えたい方
- 「国と地方公共団体の関係」「自治体同士の争いの解決方法」について理解を深めたい方
- 憲法・地方自治法の実務的な運用イメージを知っておきたい方
係争処理とは?
国と地方公共団体、または地方公共団体同士の間で争いが生じた場合、これをどう処理するかを定めた制度が「係争処理」です。
地方自治の原則により、これらの関係は対等であるため、公平・中立な第三者による審査が必要になります。
国と地方公共団体の間の係争処理
公平な第三者機関:国地方係争処理委員会
国の関与に対して国と地方公共団体の間で対立が生じた場合、その審査を行うために「国地方係争処理委員会」1が総務省に設置されています(250条の7第1項)。この委員会は、公平・中立の立場から審査を行います。
審査の申出方法
地方公共団体の長や執行機関は、国の関与に不服があるとき、国地方係争処理委員会に対して、文書で審査を申出をすることができます(250条の13第1項~3項)。2
審査の結果とその後の対応
国地方係争処理委員会は、次のように対応します(250条の14第1項・2項)。
- 【自治事務の場合】
関与が違法または不当と認められたとき 👉 国に対し理由を付し、期間を示して、必要な措置を講ずべきことを勧告を出し、地方公共団体の長その他の執行機関に通知・公表。 - 【法定受託事務の場合】
関与が違法と認められたとき → 同様に国に勧告、地方公共団体に通知・公表。
逆に、関与が適法かつ妥当と判断されれば、その旨を通知・公表します(250条の14第1項・2項)
裁判で争うには「委員会での審査」が前提
国地方係争処理委員会の審査結果に不服がある場合、地方公共団体は高等裁判所に訴訟を提起することができます(251条の5第1項)。
ただし、訴えを起こすには、先に委員会に審査を申し出ていることが条件となります(=審査申出前置主義)。
--- config: theme: neutral --- flowchart TB subgraph 係争 国の行政庁 地方公共団体 end 国の行政庁 -->|①関与| 地方公共団体 地方公共団体 -->|②審査の申出| 国地方係争処理委員会 国地方係争処理委員会 -->|③審査| 国地方係争処理委員会 国地方係争処理委員会 -->|④通知| 地方公共団体 国地方係争処理委員会 -->|④勧告or通知| 国の行政庁 地方公共団体 -->|⑤出訴|高等裁判所
地方公共団体同士の係争処理
都道府県と市町村など、地方自治体同士も対等な関係にあるため、争いが起こった際には同様に第三者による審査制度が設けられています(251条)。
第三者機関:自治紛争処理委員と申出方法
市町村が都道府県の関与に異議を唱える場合、総務大臣に申出を行い、総務大臣が事件ごとに自治紛争処理委員を任命3して審査を行います(251条の3第1項~3号)。4
審査の結果と対応
自治紛争処理委員の判断により、国地方係争処理委員会と同様の勧告・通知・公表が行われます(251条の3第5項、250条の14第1項)。
都道府県の関与に関する訴え
自治紛争処理委員の審査の結果に不服がある市町村は、高等裁判所に出訴することが可能です(251条の6第1項)。
まとめ
行政書士試験では、国と地方、または地方自治体同士の「係争処理」の仕組みや手続きの流れが問われることがあります。
特に、審査申出前置主義や、自治事務と法定受託事務の違い、勧告の対象や通知義務の有無などは押さえておきたいポイントです。