会社法2-4:発起人・設立時取締役の責任とは?会社設立に関わる人が知っておくべき法律知識をわかりやすく解説!

【この記事はこんな人におすすめ】
  • 会社法の設立手続に関する問題が出ると焦ってしまう行政書士試験受験者
  • 発起人や設立時取締役の「責任」の範囲を整理しておきたい方
  • 「任務懈怠責任」「不足額支払い責任」などの条文を理解したい方
目次

設立関与者の責任

株式会社を設立する際には、「発起人」「設立時取締役」「設立時監査役」といった関係者が関わりますが、これらの人たちは設立手続に問題があった場合に法律上の責任を負うことがあります

ここでは、どのような場面でどんな責任を負うのかを具体的に見ていきましょう。

① 違法・不正があったときの責任

発起人設立時取締役などが、会社の設立にあたって違法または不正な行為をした場合には、一定の責任を負います。1

また、実際に発起人として定款に署名していなくても、株式募集のパンフレットなどに自分の名前が出ることを承諾した人(=疑似発起人)も、発起人と同じように責任を負うとされています(103条4項)。

② 不足額支払い責任(会社法52条)

現物出資財産引受が行われた際に、その財産の価額が定款に記載された価額に著しく不足するとき発起人設立時取締役は、その差額(不足額)を連帯して会社に支払わなければなりません(52条1項)。2

ただし、この責任は発起人等にとって厳しい責任となることから、以下のような次のようなケースでは責任を免れることができます。

〇:免責あり ×:免責なし

現物出資をした発起人や会社に財産を譲渡した発起人それ以外の者
発起設立募集設立
検査役の調査を受けた場合(52条2項柱書括弧書)(52条2項)(52条2項)
職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明した場合(52条2項柱書括弧書)(52条2項)(103条1項)
総株主の同意がある場合(55条)(55条)(55条)

③ 任務懈怠責任(にんむけたいせきにん)(会社法53条〜55条)

● 会社に対する責任

発起人設立時取締役設立時監査役は、株式会社の設立についてその任務を怠ったことにより会社に損害が発生した場合は、連帯してその賠償をする責任を負います(53条1項54条)。

※この責任は、総株主の同意があれば免除可能です(55条)。

● 第三者に対する責任

発起人設立時取締役・設立時監査役がその職務を行うについて悪意または重大な過失があったときは、これによって第三者に生じた損害についても賠償する責任を負います(53条2項)。

※この場合は、株主の同意があっても免除できません

④ 出資の履行を仮装したときの責任(会社法52条の2、102条の2)

出資をしたフリをして、実際にはお金や財産を出していない(=出資の仮装)ことが発覚した場合、発起人や設立時募集株式の引受人は、次のような責任を負います。

このような責任も、総株主の同意がなければ免除できません55条102条の2第2項)。

まとめ

会社設立に関わる人たちは、「ただの手続き関係者」とは言えません。違法行為・不正・評価ミス・任務怠慢・出資の仮装などがあると、重い責任を問われる可能性があります。

行政書士試験でもよく問われるポイントですので、条文の内容とあわせて、どんな行為にどんな責任が生じるかを図表などで整理しておくのがおすすめです!

  1. 参考:発起人や設立時取締役が、設立に際して発行される株式の引受けや払込みがない部分の引受け・払込みをしなければならないという引受担保責任・払込担保責任は、会社法の成立に伴い廃止されている。 ↩︎
  2. 具体例:1億円の土地を現物出資する旨が定款に記載されていたにもかかわらず、実際にはその土地が3,000万円の価値しかなかった場合、発起人や設立時取締役は、会社に対して7,000万円を支払う義務を負う。 ↩︎
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