- 行政書士試験の「会社法」分野を重点的に勉強している方
- 「設立無効」「株式会社の不成立」「株式会社の不存在」の違いがごちゃごちゃになっている方
- 試験に出やすい「瑕疵ある会社設立」の知識を確実に押さえておきたい方
株式会社設立の瑕疵とは?
株式会社を設立するには、定款の作成や登記など、決められた手続をしっかり踏まなければなりません。
しかし、これらの手続にミス(=瑕疵)があると、株式会社の成立が無効になる場合があります。ここでは、設立に関する瑕疵の種類として「設立無効」「会社の不成立」「会社の不存在」の3つを整理します。
設立無効とは?
株式会社の設立の登記が終わって「株式会社が成立した」状態になっていても、その設立手続に重大なミスがあった場合、裁判で「設立は無効」と判断されることがあります。
(例:定款の絶対的記載事項を欠く場合や、公証人による定款認証がない場合など)
本来、無効であれば、いつでも誰でもその主張をすることができるはずですが、会社はすでに活動を始めていて、取引先や社員など多くの利害関係者が存在するため、誰でもいつでも無効を主張できるわけではありません。
そのため、設立無効は、訴えによってのみ主張することができることとされています(828条1項柱書)。
設立無効の訴えの提訴期間は株式会社成立の日から2年以内に限られ(828条1項1号)、提訴権者も株主・取締役・執行役・監査役・清算人に限定されています(828条2項1号)。
そして、設立無効判決により、株式会社の設立は、将来に向かってその効力を失います(839条)。
- 主張方法:設立無効は裁判(設立無効の訴え)によってのみ主張可能(会社法828条1項)
- 訴えられる期間:会社が成立してから2年以内(828条1項1号)
- 訴えられる人:株主・取締役・執行役・監査役・清算人に限られる(828条2項1号)
- 効果:裁判で設立無効とされた場合、将来に向かって効力を失う(839条)
会社の不成立とは?
会社の不成立とは、そもそも会社設立が最後まで完了しなかった場合のことです。つまり、登記に至らず、会社として誕生しなかったケースです。
この場合、発起人は、連帯して、設立に関してした行為についてその責任を負い、設立に関して支出した費用を負担しなければなりません(56条)。
- 設立手続きが途中で終わってしまった
- この場合、発起人が連帯して責任を負う(会社法56条)
- 設立にかかった費用も、発起人が負担する
会社の不存在とは?
会社の不存在とは、一見すると会社のように見えても、実際には設立手続がまったく整っておらず、誰が見ても明らかに「会社とは言えない」ような場合のことを指します。
例:定款も登記もしていないのに、勝手に「株式会社○○」と名乗っている
このような場合は、誰でも、いつでも「そんな会社は存在しない」と主張できます。
まとめ:3つの区別を覚えよう!
区分 | 設立無効 | 不成立 | 不存在 |
---|---|---|---|
登記 | 済 | 未了 | 外観上も会社でない |
主張方法 | 裁判 | – | いつでも主張可 |
主張できる人 | 特定の関係者 | – | 誰でも |
主張期間 | 成立から2年以内 | – | 期限なし |
効果 | 将来に向かって効力を失う | 会社自体が成立していない | 最初から効力なし |