会社法3-7:募集株式の発行等

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募集株式の発行等とは?

募集株式の発行等とは、「新株の発行」と「自己株式の処分」をまとめた概念。これらは、会社成立後の資金調達の方法として行われるもの。

募集株式の発行等の態様には、株主の持ち株数に応じて株式の割当てを受ける権利を与える場合(株主割当て)と、株主以外の第三者に株式の割当てを受ける権利を与える場合(第三者割当て)の2つがある。

手続

①募集事項の決定

募集株式の発行等を行う場合、募集株式の数・払込金額などの募集事項を決定しなければならない。

募集事項の決定を行う機関は、次の通り。1

公開会社非公開会社
株主割当て取締役会決議原則:株主総会の特別決議
例外:定款の定めにより、取締役の決定(取締役会設置会社の場合、取締役会決議)とすることができる。
第三者割当て取締役会決議原則:株主総会の特別決議
例外:株主総会の特別決議により、取締役の決定(取締役会設置会社の場合、取締役会決議)に委任することができる。

②出資の履行

募集株式の引受人は、払込期日または払込期間内に、株式会社が定めた銀行等の払込取扱場所において、募集株式の払込金額の全額を払い込み(208条1項)、またはそれに相当する現物出資財産を給付しなければならない(208条2項)。2

そして、募集株式の引受人が出資の履行をしないときは、当該出資の履行をすることにより募集株式の株主となる権利を失う208条5項)。

③株主となる時期

募集株式の引受人は、払込期日が定められたときはその払込期日に、払込期間が定められたときは出資を履行した日に、出資の履行をした募集株式の株主となる(209条1項)。

違法な募集株式の発行等に対する措置

株主による差止め請求

募集株式の発行等が法令定款に違反し、または著しく不公正な方法により行われる場合において、株主が不利益を受けるおそれがあるときは、株主は、株式会社に対し、募集株式の発行等の差止めを請求することができる(210条)。

無効の訴え

募集株式の発行等の無効は、効力が生じた日から6カ月以内(非公開会社の場合は1年以内)に、訴えをもってのみ主張することができる(828条1項2号・3号)。

無効原因に当たるかどうかは、次のとおり。

  • 無効原因に当たる
    1. 発行可能株式総数を超えて新株を発行した場合
    2. 募集株式の発行等の公告・通知をしなかった場合(募集株式発行差止め請求をしたとしても差止めの事由がないためにこれが許容されないと認められる場合を除く(最判平9.1.28))
  • 無効原因に当たらない
    • 代表取締役が有効な取締役会決議を経ないで新株を発行した場合(最判昭36.3.31)
    • 株主総会の特別決議を経ないで第三者に対して有利発行が行われた場合(最判昭46.7.16
  1. 参考:払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合、株主総会の特別決議が必要であり、取締役会は、その株主総会において、理由を説明しなければならない(199条3項201条1項309条2項5号)。 ↩︎
  2. 参考:募集株式の引受人は、出資の履行をする債務と会社に対する債権とを相殺することができない(208条3項)。 ↩︎
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