商法2-5:「匿名組合契約」とは?仕組み・出資・責任関係をやさしく解説

【この記事はこんな人におすすめ】
  • 商法の「匿名組合契約」の内容を短時間で理解したい
  • 出資の仕組みや匿名組合員の責任範囲について知りたい
  • 行政書士試験に向けて、条文と判例を整理して学びたい

匿名組合契約は、商法の中でも出題頻度は高くありませんが、仕組みが独特でつまずきやすいテーマです。本記事では、条文の要点をかみくだいて、具体例を交えながらわかりやすく解説します。

目次

匿名組合契約とは?

匿名組合契約535条)。とは、「資金を出す人(匿名組合員)」と「営業を行う人(営業者)」の間で結ばれる契約で、匿名組合員が営業者のために出資をし、その見返りとして営業から得られた利益の分配を受けることを約束するものです。

例:資金はあるが経営のノウハウがないAさんが、商売の才能があるBさんに出資し、Bさんの営業利益の一部を分けてもらう、というような場面です。

なお、出資をした人を匿名組合員といい、営業を行う人を営業者という。

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
匿名組合員["匿名組合員<br>(出資をした人)"] ----->|①出資|営業者
営業者["営業者<br>(営業を行う人)"] ----->|②利益の分配|匿名組合員

匿名組合員の出資は誰のもの?

匿名組合員が出資した金銭や財産は、営業者の財産に組み込まれます(536条1項)。
また、出資の対象は「金銭その他の財産」に限られており、労務などは出資の対象になりません(536条2項)。

匿名組合員にはどんな権利・義務がある?

営業への関与はできない(業務執行権・代表権なし)

匿名組合員は、営業者の業務を執行したり、営業者を代表したりすることはできません(536条3項)。
これは、「名前を出さずに資金だけを出す」契約だからです。

第三者に対して責任を負わないのが原則

営業者の行為について、匿名組合員が第三者に対して権利や義務を負うことは原則としてありません(536条4項)。
ただし、次のような例外があります。

匿名組合員が、営業者の商号(会社名など)に自己の氏・氏名・商号を使わせることを許した場合は、その名前を使い始めた後に生じた債務について、第三者に対して連帯責任を負うことになります(537条)。

匿名組合契約が終了するのはどんなとき?

匿名組合契約は、解除540条)のほか、次のような事由で終了します(541条)。

〇:終了 ×:終了しない

終了事由営業者匿名組合員
死亡×
後見開始の審判×
破産手続開始の決定

つまり、営業者に大きな事情変更(死亡や破産など)があると契約は終了しますが、匿名組合員側の事情では基本的に終了しません。

契約が終了したらどうなる?

契約が終了した場合、営業者匿名組合員に対して、その出資の価額を返還する義務を負います。出資が損失によって減少したときは、その残額を返還すれば足りるとされています(542条)。

【まとめ】

  • 匿名組合契約は「資金を出す人」と「経営する人」を結ぶ制度
  • 匿名組合員の出資は営業者の財産に属する
  • 匿名組合員は営業に関与できず、原則として第三者に対して責任を負わない
  • ただし名前を貸した場合は連帯責任を負う
  • 営業者の死亡・破産などで契約は終了する
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