民法27-2:遺産分割

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遺産分割とは?

遺産分割とは、共同相続財産たる遺産を相続分に応じて分割し、各相続人の個人財産とすること。1

遺産分割の方法

遺産分割手続は以下の順序により行われる。

①指定分割

被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、もしくはこれを定めることを第三者に委託することができる(908条)。2

②協議分割

共同相続人は、被相続人が遺言で禁じた場合または共同相続人が分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部または一部の分割をすることができる(907条1項)。協議による分割では、内容的にどのような分割をすることもできる。3

もっとも、参加すべき参加人を除外した遺産分割は無効となる。ただし、相続の開始後、認知によって相続人となった者が遺産の分割を請求しようとする場合において、他の共同相続人が既にその分割その他の処分をしたときは、価額のみによる支払いの請求権を有することになる(910条)。

③審判分割

遺産の分割について、共同相続人に協議た調わないとき、または協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部または一部の分割を家庭裁判所に請求することができる(907条2項)。

この審判による分割は、協議による分割と異なり、遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切の事情を考慮してなされる(906条)。

遺産分割の禁止

遺産分割は、次のような場合に禁止される。

  • 遺言による禁止
    被相続人は、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる(908条1項)。

  • 契約による禁止
    共同相続人は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる(908条2項本文)。

  • 審判による禁止
    特別の事由があるときは、家庭裁判所は、5年以内の期間を定めて、遺産の全部または一部について、その分k夏を禁ずることができる(908条4項本文)。

遺産分割の効力

①遺産分割の遡及効

遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生じるが、第三者の権利を害することはできない(909条)。

②共同相続人の担保責任

各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う(911条)。

遺産分割前の預貯金の払戻し

遺産分割前は、各共同相続人が単独で被相続人の預貯金の払戻しを受けることができなかった。しかし、被相続人の預貯金は、被相続人が負っていた債務の弁済や、被相続人から扶養を受けていた共同相続人の生活費に充てる必要がある。

そこで、被相続人の預貯金のうち3分の1に法定相続分を乗じた額(金融機関ごとに法務省令で定める額が上限)については、単独で払戻しを受けることができるようになった(909条の2前段)。

  1. 参考:遺産の分k夏前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる(906条の2第1項)。 ↩︎
  2. 重要判例:「甲土地をAに相続させる」趣旨の遺言は、遺産の分割の方法を定めたものであり、何らの行為を要せずして、被相続人の死亡の時に直ちに甲土地が相続によりAに承継される(最判平3.4.19) ↩︎
  3. 重要判例:共同相続人間において遺産分割協議が成立した場合に、相続人の1人が他の相続人に対して当該協議において負担した債務を履行しないときでも、他の相続人は541条542条によって当該協議を解除することはできない(最判平1.2.9)
    これに対して、共同相続人の全員が、既に成立している遺産分割協議の全部または一部を合意により解除した上、改めて遺産分割協議をすることはできる(最判平2.9.27)。 ↩︎
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