地方自治法とは?
地方自治法制定の経緯
大日本帝国憲法は、地方自治に関する規定を設けていなかったが、戦後に日本国憲法が制定された際に、第8章に地方自治の規定が設けられた。そして、これを受けて、昭和22年に地方自治法が制定された。

地方自治法の目的
地方自治法は、地方自治の本旨に基づいて、地方公共団体の区分ならびに地方公共団体の組織・運営に関する事項の大綱を定め、併せて国と地方公共団体との間の基本的関係を確立することにより、地方公共団体における民主的にして能率的な行政の確保を図るとともに、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的としている(1条)。
なお、地方自治法の本旨とは、①住民自治、②団体自治の2つを意味するが、明示した規定はない。
地方公共団体の種類
地方自治法上、地方公共団体は、普通地方公共団体と特別地方公共団体の2つに大別されている(1条の3第1項)。
普通地方公共団体
普通地方公共団体とは、都道府県と市町村のことをいう(1条の3第2項)。
市町村は、基礎的な地方公共団体であり(2条3項)、その区域において住民に最も身近な団体として事務を行う。対して、都道府県は、市町村を内部に含んでおり(5条2項)、市町村に対する援助・連絡調整など広域的な観点から事務を行う。1
もっとも、地方分権の推進のため、住民に身近な行政はできる限り住民にとって身近な市に委ねるべきことから、都道府県が処理する事務であっても、一定の規模を有する市であれば処理することができるとされている。これを大都市等に関する特例という。
特例が認められている大都市等には、①指定都市、②中核市の2種類がある。
指定都市 | 中核市 | |
---|---|---|
意味 | 政令で指定する人口50万人以上の市 | 政令で指定する人口20万人以上の市 |
処理する事務 | 都道府県が処理することとされている事務の全部または一部(252条の19第1項) | 指定都市が処理することができる事務のうちの一部(252条の22第1項) |
区の設置 | 義務(252条の20第1項)※1 ※2 | 不可 |
関係市の申出 | 不要 | 必要(252条の24第1項)※3 |
※1 指定都市の設置する区は、行政区にすぎず、法人格を有しない。
※2 指定都市は、必要と認めるときは、条例で区地域協議会を置くことができる(252条の20第7項)。
※3 市が中核市の指定の申出をしようとする場合、あらかじめ議会の議決を経て、都道府県の同意を得なければならない(252条の24第2項)。
特別地方公共団体
特別地方公共団体とは、普通地方公共団体だけでは十分に処理できない事務を処理するために、特別に設置された地方公共団体のこと。特別地方公共団体には、①特別区、②地方公共団体の組合、③財産区の3種類がある(1条の3第3項)。
- ①特別区
-
特別区とは、東京23区のこと。実質的には市町村と同様の地方公共団体。
- ②地方公共団体の組合
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地方公共団体の組合とは、複数の地方公共団体が事務を共同でするために設置する団体。2
地方公共団体の組合は、一部事務組合と広域連合の2種類に分類される(284条1項)。
一部事務組合3 普通地方公共団体(市町村・都道府県)および特別区が、その事務の一部を共同して処理するために設置する団体 広域連合 普通地方公共団体および特別区が、広域にわたる総合的な計画を作成し、その事務の一部を計画的に処理するために設置する団体 - ③財産区
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財産区とは、市町村または特別区の一部が財産を有している場合などに、その管理や処分を目的として設置される団体のこと(294条)。
✅地方公共団体の種類のまとめ
--- config: theme: neutral --- flowchart LR 地方公共団体 --> 普通地方公共団体 普通地方公共団体 --> 都道府県 普通地方公共団体 --> 市町村 地方公共団体 --> 特別地方公共団体 特別地方公共団体 --> 特別区 特別地方公共団体 --> 地方公共団体の組合 地方公共団体の組合 --> 一部事務組合 地方公共団体の組合 --> 広域連合 特別地方公共団体 --> 財産区
- 参考:従来、市町村は、その事務を処理するに当たり、議会の議決を経て、総合的かつ計画的な行政の運営を図るための基本構想をさだめなければならないとされていたが、この規定は削除された。 ↩︎
- 具体例:地方公共団体の事務として消防活動があるが、1つの地方公共団体では、高性能の消防車を購入するのは費用面の負担が大きいことと、大規模な火災が発生した場合に人手が足りない事態も想定できることから、消防活動を他の地方公共団体と共同で行うため、地方公共団体の組合を設置する場合など ↩︎
- 参考:一部事務組合には議会が設置されるので(287条1項5号)、その独自の条例が制定されることがある(292条、96条1項1号)。 ↩︎