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株主平等の原則
株式会社は、株主をその持株数や有する株式の種類に応じて平等に取り扱わなければならない(109条1項)。これを株主平等の原則という。1
株主平等の原則に反する定款・契約・決議などは、株主の承認がない限り、無効となる。
株主の権利
自益権と共益権
株主の権利は、その権利の内容に着目して、自益権と共益権に分類できる。
自益権 | 共益権 | |
意味 | 会社から経済的利益を受ける権利 | 会社の経営に参加する権利 |
具体例 | ①剰余金配当請求権(105条1項1号) ②残余財産分配請求権(105条1項2号) ③株式買取請求権(192条など) | ①株主総会における議決権(105条1項3号) ②株主の監督是正権 |
単独株主権と少数株主権
株主の権利は、その権利を行使する条件に着目して、単独株主権と少数株主権に分類できる。
単独株主権 | 少数株主権 | |
意味 | 1株しか有していない株主でも行使できる権利 | 発行済株式総数の一定の割合以上または総株主の議決権の一定割合以上・行って数以上を有する株主のみが行使できる権利 |
具体例 | ①自益権 ②株主総会における議決権 | ①株主総会招集請求権 ②役員解任請求権 など |
株式の共有
株式を2人以上の者が共有することが認められているが、共有者は、共有株式についての権利を行使する者1人を定めて会社にその者の氏名・名称を通知しなければ、その株式について権利を行使することができない(106条本文)。
ただし、会社から共有者に権利行使させることを認めることは可能(106条但書)。
株式買取請求権
株式買取請求権とは?
株式買取請求権とは、会社や株主に重大な影響を与える行為に反対する株主が、会社に対して、その有する株式の買取りを請求することができる権利のこと。これにより、少数派の株主に投下資本回収の手段を与えることができる。
株式買取請求権を行使できる場合
株式を買い取ることは、会社にとっては本来禁止されている出資の払戻しとなるため、株式買取請求権を行使できる場合は限定されている。
株式買取請求権を行使できる場合としては、以下のようなものがある。234
- 発行する株式全部に譲渡制限の定めを設ける定款変更をする場合(116条1項1号)
- 譲渡制限種類株式・全部取得条項付種類株式とする旨の定款変更をする場合(116条1項2号)
- 株式の併合・株式の分割・株式無償割当て・単元株制度を採用する旨の定款変更等をする場合など(116条1項3号)
- 事業譲渡(469条)、合併・会社分割(785条、797条、806条)、株式交換(785条、797条)、株式移転(806条)などの組織再編行為をする場合
- 単元未満株式を保有する者(192条)
手続
株式買取請求権5を行使するためには、株主総会の決議に先立ち反対する旨を会社に通知し、かつ、株主総会でも議案に反対の議決権行使をしなければならない(116条2項1号イ)。
ただし、議決権のない株主(議決権制限株式)は、そもそも株主総会に参加することができないので、上記の手続を経ずに株式買取請求をすることができる(116条2項1号ロ)。
- 参考:非公開会社では、定款の定めにより、剰余金配当請求権・議決権について、持株数に応じてではなく、株主(人)ごとに異なる取扱いをすることが認められている(109条2項) ↩︎
- 参考:議決権制限株式とする旨の定款変更を行う場合には、株式買取請求権を行使することができない。 ↩︎
- 参考:設立時株主は、創立総会における定款変更の決議に反対したとしても、株式買取請求権を行使することはできない。 ↩︎
- 参考:❶~❸の場合の株式買取請求により支払った金額が分配可能額を超えた場合、業務執行者はその超過額について責任を負う(464条1項)。 ↩︎
- 参考:株式の買取りを会社に対して請求した株主であっても、会社の承諾があれば、買取請求を撤回することができる(116条7項)。 ↩︎