取締役会の職務
取締役会とは、すべての取締役で組織される合議制の機関で、その職務は、①業務執行の決定、②個々の取締役の職務の執行の監督、③代表取締役の選定・解職の3つ
業務執行の決定
取締役会は、会社の日常業務(常務)の意思決定を代表取締役や業務執行取締役に委任することができる。
しかし、以下のような特に会社にとって重要な事項は、代表取締役等に委任する子ができず、取締役会で決議しなければならない(362条4項各号)。
✅取締役会で決議しなければならない事項
- 重要な財産の処分・譲受け
- 多額の借財
- 支配人その他の重要な使用人の選任・解任
- 支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止
- 募集社債に関する重要事項
- 株式会社の業務ならびに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な内部統制システムの整備構築
- 定款の定めに基づく役員等の会社に対する損害賠償責任の免除
個々の取締役の職務の執行の監督
代表取締役・業務執行取締役は、3か月に1回以上、職務執行の状況を取締役会に報告しなければならない(363条2項)。これにより、取締役会を3か月に1回以上開催する必要があることになる。
代表取締役の選定・解職
取締役会は監督や意思決定する合議体なので、そこで行われた意思決定の執行者として代表取締役が選定される(362条3項)。
取締役会の招集手続
招集権者
取締役会の招集権は、原則として、各取締役が有する(366条1項本文)。もっとも、定款または取締役会で招集権者たる取締役を定めることも可能(366条1項但書)。
また、招集権者と定められていない取締役であっても、招集請求をすることは可能(366条2項・3項)。1
招集通知
召集の通知方法にとくに制限はなく、口頭でも書面でも構わない。また、招集通知に目的である事項(議題)および議案を示す必要もない。
招集通知は、取締役会の1週間前に発しなければならないが、定款でこの期間を短縮することも可能(368条1項かっこ書)。2
招集手続の省略
取締役(監査役設置会社では取締役および監査役)の全員の同意があるときは、招集手続を省略することができる(368条2項)。
取締役会の決議
議決権
取締役会の場合は、1人につき1議決権が認められる。株主の場合と異なり、議決権の代理行使は許されない。
また、決議に特別な利害関係を有する取締役は、そもそも議決に加わることができない(369条2項)。
決議要件
議決に加わることができる取締役の過半数が出席し、その出席取締役の過半数で決定する(369条1項)。この要件を定款で加重することはできるが、軽減することはできない。
持ち回り決議
議決に加わることができる取締役全員が書面・電磁的記録により議案である提案に同意する意思票をした場合には、その議案を可決した取締役会決議があったものとみなす旨を定款で定めることができる(370条)。これは、持ち回り決議を認めて、取締役会の開催の省略を許すもの。
※参考:監査役設置会社において監査役が異議を述べた場合、持ち回り決議は許されない(370条かっこ書)。
決議の瑕疵
取締役会決議の瑕疵については、株主総会決議のように特別の訴えの制度が用意されていないので、一般原則により当然に無効となる。
取締役会議事録
備置き
取締役会が終了した後は、議事の経過の要領と結果について議事録を作成し、出席者が署名をし、会議終了日から10年間、本店に備え置かなければならない(369条3項、371条1項)。
閲覧・謄写
株主は、権利行使のために必要があるときは、株式会社の営業時間内はいつでも(監査役設置会社・監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社では裁判所の許可を得て)議事録の閲覧・謄写請求をすることができる(371条2項・3項)。
また、会社債権者・親会社社員は、取締役の責任追及のために必要な場合に限り、裁判所の許可を得て、閲覧・謄写請求をすることができる(371条4項・5項)。
賛成の推定
取締役会の決議に参加した取締役は、議事録に異議をとどめなければ決議に賛成したものと推定される(369条5項)。
特別取締役による取締役会決議
特別取締役とは?
取締役の数が多く遠隔地にも取締役が常駐しているような大企業では、常務会と呼ばれるような形で少人数の取締役で重要事項を迅速に意思決定することが行われてきた。会社法は、これを特別取締役による取締役会決議として制度化している(373条)。
要件
特別取締役をおくためには、取締役の数が6人以上であり、かつ、社外取締役3が1人以上であることが必要。なお、特別取締役は、取締夜会で選定される。
※参考:指名委員会等設置会社は、特別取締役をおくことができない。
員数
特別取締役は、3人以上であることが必要。
決議事項
迅速性が要求される重要な財産の処分・譲受、多額の借財(362条4項1号・2号)についてのみ、特別取締役による取締役会で決議できる。