会社法4-7:「取締役会」とは?役割・決議・手続きまでわかりやすく解説

🎯この記事はこんな人におすすめ
  • 取締役会の役割や手続きをわかりやすく把握したい方
  • 行政書士試験の「会社法」の理解を深めたい方
  • 決議や議事録に関するルールを整理して覚えたい方
目次

取締役会とは?どんな役割があるのか

取締役会は、株式会社のすべての取締役によって構成される合議体(会議形式の意思決定機関)です。取締役会の主な役割は、次の3つです。

  1. 会社の業務執行の決定
  2. 個々の取締役の職務の執行の監督
  3. 代表取締役の選定・解職

業務執行の意思決定と委任できない重要事項

通常の業務(「常務」と呼ばれる日常的な業務)は、代表取締役業務執行取締役に委任せることができます。しかし、会社の根幹に関わるような「重要事項」については、取締役会で決議が必要です(362条4項各号)。

✅取締役会で必ず決議が必要な項目

  • 重要な財産の処分・譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人その他の重要な使用人の選任・解任
  • 支店その他の重要な組織の設置・変更・廃止
  • 募集社債に関する重要事項
  • 株式会社の業務ならびに当該株式会社およびその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な内部統制システムの整備構築
  • 定款の定めに基づく役員等の会社に対する損害賠償責任の免除

個々の取締役の職務の執行の監督

代表取締役業務執行取締役は、少なくとも3か月に1回、職務執行の状況を取締役会に報告する義務があります(363条2項)。

これにより、取締役会最低3か月に1回は開催する必要があることになります。

代表取締役の選定・解職

取締役会は、代表取締役を選んだり解任したりする権限を持っています。
これは、取締役会が会社の意思決定を行う機関であり、その意思を実行する代表を選ぶ立場にあるからです(362条3項)。

取締役会の招集手続

招集権者 – 誰が招集できる?

原則として、すべての各取締役が招集権を持ちます(366条1項本文)。ただし、定款や取締役会で、招集権者たる取締役を定めることも可能です(366条1項但書)。

また、招集権者と定められていない取締役であっても、招集請求をすることは可能です(366条2項・3項)。1

招集の方法と通知

  • 口頭でも書面でもOK(通知方法に制限なし)
  • 通知の際に議題や議案の提示も不要
  • 通常は1週間前までに通知が必要。ただし、定款で短縮可能368条1項かっこ書)。

※参考:招集通知は、各取締役に発しなければならず、監査役会設置会社にあっては、各取締役および各監査役に通知する必要があります(368条1項)。

招集手続の省略

取締役(監査役設置会社では取締役および監査役)の全員の同意があるときは、招集手続を省略することが可能です(368条2項)。

取締役会の決議ルール

議決権と利害関係

  • 各取締役、1人につき1議決権あり(議決権の代理行使は不可)。
  • 特別な利害関係をもつ取締役は、そもそも議決に参加できない(369条2項)。

決議要件

  • 過半数の取締役が出席
  • 出席者の過半数の賛成で可決369条1項)。
    ※定款でこの要件を「厳しく」することはできますが、「緩く」はできません。

持ち回り決議とは?

議決に加わることができる、すべての取締役が書面や電子的記録で提案に同意した場合、取締役会を開かずに決議したもの(議案を可決した取締役会決議があったもの)とみなすということを、定款で定めることができます(370条)。
※ただし、監査役が異議を述べた場合は不可です(370条かっこ書)。

決議の瑕疵 – 決議に問題があったらどうなる?

取締役会決議に瑕疵(問題)があった場合でも、株主総会決議のように特別な訴え制度はありません。
そのため、一般的な民法の原則により、当然に無効とされることになります。

取締役会議事録の作成と閲覧

取締役会が終了した後は、議事の経過の要領と結果について議事録を作成して、出席者が署名をし、本店に10年間備え置く必要があります(369条3項371条1項)。

閲覧・謄写

株主は、権利行使のために必要があるときは、株式会社の営業時間内はいつでも(監査役設置会社監査等委員会設置会社指名委員会等設置会社では裁判所の許可を得て)議事録の閲覧・謄写請求をすることができます(371条2項・3項)。

会社債権者・親会社社員は、取締役の責任追及のために必要な場合に限り、裁判所の許可を得て、閲覧・謄写請求をすることができます(371条4項・5項)。

賛成の推定

出席した取締役が議事録に異議を記録していない場合、決議に賛成したと推定されます(369条5項)。

特別取締役による取締役会決議

特別取締役とは?

取締役の数が多く遠隔地にも取締役が常駐しているような大企業では、常務会と呼ばれるような形で少人数の取締役で重要事項を迅速に意思決定することが行われてきました。会社法は、これを特別取締役による取締役会決議として制度化しています(373条)。

設置の条件と人数

  • 取締役が6人以上
  • かつ、社外取締役2が1人以上
  • 特別取締役は3人以上必要

※参考:指名委員会等設置会社は、特別取締役は設置不可。

決議できる事項

迅速性が求められる以下の2点に限って決議可能です(362条4項1号・2号

  • 重要な財産の処分・譲受
  • 多額の借財

まとめ:取締役会の全体像をつかもう!

取締役会は、株式会社の経営において非常に重要な意思決定機関です。行政書士試験でも頻出のテーマなので、構成・役割・手続・決議要件などをしっかり整理しておくことがポイントです。

  1. 参考:監査役が設置されている場合、監査役も、取締役の不正行為やそのおそれ、法令・定款違反の事実、著しく不当な事実があると認める時は、取締役会を招集することができる(383条2項・3項)。 ↩︎
  2. 社外取締役:株式会社の取締役であって、当該株式会社またはその子会社の業務執行取締役・執行役・支配人その他の使用人ではなく、かつ、その就任の前10年間にこれらの役職についたことがないことなどの要件を満たすもののこと(2条15号)。 ↩︎
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