民法7-6:「引渡し」動産物権変動の基本。4種類の方法を理解しよう

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動産の物権変動① – 対抗要件

動産の物権変動の場合、対抗要件となるのは引渡し178条)です。動産は、不動産と異なり、取引が頻繁に行われるため、登記のような方法をとることは現実的に困難です。1

なお、引渡しには以下の4種類があります。

  1. 現実の引渡し182条1項
  2. 簡易の引渡し182条2項
  3. 占有改訂183条
  4. 指図による占有移転184条

※➋~❹の引渡しは、「観念の引渡し」と呼ばれます。

現実の引渡し

  • 意味
    現実になされる引渡し

  • 具体例
    売主Aが買主Bに対して自己の所持する目的物を譲渡する場合

簡易の引渡し

意味
譲受人が既に目的物を所持している場合に、占有権移転の行為のみによってなされる引渡し

具体例
賃借人Aが賃貸人Bから目的物の譲渡を受け、引き続きAが目的物の占有を継続する場合

占有改定(せんゆうかいてい)

意味
譲渡人が目的物の所持を継続する場合に、譲受人が譲渡人を介して代理占有する旨の合意によって占有権を移転する方法

具体例
売主Aが買主Bに対して自己の所持する目的物を譲渡し、これをすぐに借りて引き続きAが目的物の占有を継続する場合

指図による占有移転

意味
間接占有者が第三者との合意および直接占有者への指図によって、直接占有者に所持させたまま第三者に占有権を移転する方法

具体例
売主Aが買主Bに対してCに預けていた目的物を譲渡し、以後その物をBのために占有するよう命じ、Bがこれを承諾する場合

※指図による占有移転は、占有代理人(直接占有者)の承諾は不要

物権変動インデックス

  1. 重要判例:最判昭29.8.31 受寄者は、いつでも寄託者の返還請求に応じなければならず(662条1項)、引渡しの欠缺を主張する正当な利益がないので、178条の「第三者」に当たらない。 ↩︎
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