行政法26:地方公共団体の立法

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地方公共団体の自主立法

地方公共団体は、その区域内におけるルールを独自に制定することができる。このように、地方公共団体は、自主立法権を有している。これは、全国一律の法律というルールで規制するよりも、地方公共団体が自主的に制定したルールで規制した方が、地方の実情に応じた規制をすることができるからである。

なお、地方公共団体の自主立法のうち、議会が制定する者を条例、長が制定するものを規則という。

条例

法令と条例の関係

憲法94条は、地方公共団体は、「法律」の範囲内で条例を制定することができると規定している。そこで、法律に違反しなければ、自由に条例を制定することができるようにも思える。12

しかし、地方自治法14条1項は、地方公共団体は「法令(法律+命令)」に違反しない限り、条例を制定することができると規定している。つまり、憲法の規定を一歩進めて、法律のみならず命令に違反する条例も許されないとしている。

なお、条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみならず、それぞれの趣旨・目的・内容・効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによって決定しなければならないとされている(徳島市公安条例事件:最大判昭50.9.10)。したがって、国の法令で定めていない分野を規制する横出し条例や、国の法令が定めている規制よりも厳しい規制を課する上乗せ条例も、趣旨・目的・内容・効果を比較し矛盾抵触がなければ、認められる。34

権利義務と条例

普通地方公共団体は、義務を課し、または権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない(14条2項)。

条例と罰則

普通地方公共団体は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、その条例中に、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役もしくは禁錮、100万円以下の罰金拘留科料もしくは没収の刑または5万円以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(14条3項)。

規則

長は、法令に違反しない限り、その権限に属する事務に関し、規則を制定することができる(15条1項)。長の定める規則も、法令に違反することはできない。5

なお、長は、法令に特別の定めがあるものを除くほか、普通地方公共団体の規則中に、規則に違反した者に対し、5蔓延以下の過料を科する旨の規定を設けることができる(15条2項)。

  1. 重要判例:憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されるから、地方公共団体が売春の取締について各別の条例を制定する結果、その取扱いに差別を生ずることがあっても、平等原則に違反しない(最大判昭33.10.15) ↩︎
  2. 参考:条例は、自治事務法定受託事務を問わず制定することができる。 ↩︎
  3. 重要判例:普通地方公共団体が条例をもって普通河川の管理に関する定めをする場合、河川法が適用河川等について定めるところ以上に強力な河川管理の定めをすることは、同法に違反し許されない(最判昭53.12.21)。 ↩︎
  4. 重要判例:地方税法の法定普通税の規定に反する内容の定めを条例に設けることによって当該規定の内容を実質的に変更することは、それが法定外普通税に関する条例であっても、地方税法の規定の趣旨・目的に反し、その効果を阻害する内容のものとして許されない(最判平25.3.21) ↩︎
  5. 参考:規則は長が1人で制定するものであるのに対し、条例は議会の議員全員で審議した上で制定するものであるから、条例と規則が抵触した場合、条例が優先する。 ↩︎
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