- 「地方公共団体の財務」についての基本的な流れを押さえたい行政書士試験の受験生
- 「予算」「決算」「契約」などの用語を正確に理解して得点につなげたい方
- 覚えるべき条文のポイントや出題傾向が知りたい方
地方公共団体の財務とは? その流れを基礎から確認!
地方公共団体は、国とは独立して「予算の編成」「収入と支出」「決算」などの財政事務(財政という)を処理することができます。これを「自主財政権」といい、地方自治の重要な柱のひとつです。
会計年度と会計原則
地方公共団体の会計年度1は、毎年4月1日から翌年3月31日までと定められています(208条1項)。
また、各会計年度の歳出は、その年度の歳入をもって対応しなければならず(208条2項)、これは「会計年度独立の原則」と呼ばれます。
gantt title 地方公共団体の会計年度と予算・決算の流れ dateFormat YYYY-MM-DD axisFormat %m月 section 予算 予算調製・提出(前年) :budget_prep, 2023-10-01, 6M 予算議決→成立 :budget_approval, 2024-03-01, 1M section 会計年度 会計年度_歳入・歳出の実施 :income_expenditure, 2024-04-01, 12M section 決算 決算調製・書類作成 :settlement_prep, 2025-04-01, 3M 決算書類を長に提出 :settlement_review, 2025-07-01, 1M
地方公共団体の財務の基本構造
会計区分
地方公共団体の会計は、次の2つに分かれます(209条1項)。
地方公共団体の会計は、一般会計と特別会計に区分される(209条1項)。
予算の作成と議決
- ①調製・提出
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予算案を調製(作成)し、提出するのは「地方公共団体の長」の専権事項です(149条2号)。
議会や行政委員会にはその権限はありません。 - ②議会による議決
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議会は予算の内容を増額して議決することが可能ですが、長の提出権限そのものを侵すことはできません(97条2項)。
収入と支出
- ①収入
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地方公共団体の収入としては、地方税・分担金・加入金・使用料・手数料・地方債などが地方自治法に規定されています。
分担金・加入金・使用料・手数料については、条例で定めなければならない(228条1項前段)。
これに対して、地方債は、別に法律で定める場合において、予算の定めるところにより、起こすことができる(230条1項)。
- ②支出
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会計管理者は、普通地方公共団体の長の政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができません(232条の4第1項)。5
決算と報告義務
会計管理者は、毎会計年度、政令で定めるところにより、決算を調製し、出納(すいとう)6の閉鎖後3カ月以内に、証書類その他政令で定める書類と合わせて、長に提出しなければなりません(233条第1項)
契約に関するルール
地方公共団体が締結する契約(特に私法上の契約)では、公平性と公金の効率的運用が求められ、以下のような規制が設けられています。
地方公共団体の行う契約は、一般競争入札によるのが原則とされています。もっとも、政令で定める場合には、指名競争入札・随意契約・せり売りの方法によることも可能です(234条1項・2項)。
👉最重要判例:指名競争入札における損害業者の排除(最判平18.10.26)
■地方公共団体の契約
一般競争入札 | 不特定多数の者を入札に参加させ、契約の相手方となるために競争させる方法 |
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指名競争入札 | 資産や信用等の点であらかじめ適切と思われる特定多数の者を通知によって指名し、入札の方法によって競争させる方法 |
随意契約 | 競争の方法によらずに、特定の相手方を任意に選択して締結する方法7 |
せり売り | にゅさつの方法によらずに、不特定多数の者を口頭または挙手によって競争させる方法 |
時効に関する規定
地方公共団体の金銭債権・債務は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、5年間の消滅時効にかかります(236条1項)。
また、これらの債権・債務については、
とされている点にも注意が必要です(236条2項)。
財産の管理・処分
地方公共団体の財産(公有財産・物品・債権・基金など)を交換・出資・譲渡・課金するには、原則として条例または議会の議決が必要です(237条1項・2項)。8
✅まとめ:地方財政の流れを理解して得点源に!
地方公共団体の財務は、予算から決算、契約、財産の管理に至るまで、行政書士試験でも頻出のテーマです。
特に、条文の条数・会計区分・契約方法の違いなどは整理して覚えておきましょう!
- 会計年度:地方公共団体の収入・支出の計算を区分・整理し、財務会計を明らかにするために設けられる一定の期間。 ↩︎
- 参考:一般会計には予備費を計上しなければならないが、特別会計には予備費を計上しないことができる(217条1項)。 ↩︎
- 具体例:簡易下水道の費用など ↩︎
- 具体例:地方公共団体の運営するテレビ放送の視聴を開始するにあたって支払う加入金など ↩︎
- 参考:地方公共団体は、公益上必要がある場合に限り、寄付または補助をすることができる(232条の2) ↩︎
- 出納:現金・物品等の受入れおよび払出しのこと ↩︎
- 重要判例:地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法は契約は、私法上、当然に無効となるものではない(最判昭62.5.19) ↩︎
- 参考:議会があらかじめ承認を与えたときは、その財産を適正な対価なくして譲渡することができる。 ↩︎