行政法27:地方公共団体の財務

目次

地方公共団体の財務の流れ

地方公共団体は、予算、収入・支出、決算などに関する事務(財政という)を独自に処理することができる。
このように、地方公共団体は、自主財政権を有している。

地方公共団体の会計年度1は、4月1日から翌年3月31日までと決められている(208条1項)。そして、各会計年度における歳出は、その年度の歳入をもって、これに充てなければならないとされている(208条2項)。これを会計年度独立の原則という。

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    title 地方公共団体の会計年度と予算・決算の流れ
    dateFormat  YYYY-MM-DD
    axisFormat  %m月



    section 予算
    予算調製・提出(前年) :budget_prep, 2023-10-01, 6M
    予算議決→成立 :budget_approval, 2024-03-01, 1M

    section 会計年度
    会計年度_歳入・歳出の実施 :income_expenditure, 2024-04-01, 12M

    section 決算
    決算調製・書類作成 :settlement_prep, 2025-04-01, 3M
    決算書類を長に提出 :settlement_review, 2025-07-01, 1M

地方公共団体の財務に関する規定

会計区分

地方公共団体の会計は、一般会計特別会計に区分される(209条1項)。

特別会計は、交通事業・水道事業など地方公共団体の行う特定事業の歳入・歳出についての会計区分。特別会計は必要がある場合に条例で定めることができる(209条2項)。2

予算

①調製・提出

予算の調製・提出はの権限であり、議員や行政委員会にその権限はない(149条2号)。

②議決

議会は、予算について、増額して議決することができるが、長の予算の提出の権限を侵すことはできない(97条2項)。

収入・支出

①収入

地方公共団体の収入としては、地方税・分担金・加入金・使用料・手数料・地方債などが地方自治法に規定されている。

分担金・加入金・使用料・手数料については、条例で定めなければならない(228条1項前段)。

これに対して、地方債は、別に法律で定める場合において、予算の定めるところにより、起こすことができる(230条1項)。

地方税地方公共団体がその課税額に基づき住民から徴収するもの地方税法
分担金特定の事業によって特に利益を受ける者から徴収するもの3条例
加入金慣行により使用権が認められている公有財産で、新たに使用許可を受けた者から徴収するもの4条例
使用料行政財産の許可使用、公の施設の利用につき徴収するもの条例
手数料特定の者に対して提供するサービスの対価として徴収するもの条例
地方債地方公共団体の借入金で、その償還が一会計年度を超えて行われるもの予算
②支出

会計管理者は、普通地方公共団体の長政令で定めるところによる命令がなければ、支出をすることができない(232条の4第1項)。5

決算

会計管理者は、毎会計年度、政令で定めるところにより、決算を調製し、出納(すいとう)6の閉鎖後3カ月以内に、証書類その他政令で定める書類と合わせて、に提出しなければならない(233条第1項)

契約

地方公共団体が締結する契約のうち、私法上の契約については、事業の公正の確保や公金の効率的運用のために規制が設けられている。

地方公共団体の行う契約は、一般競争入札によるのが原則とされている。もっとも、政令で定める場合には、指名競争入札随意契約せり売りの方法によることも可能(234条1項・2項)。

👉最重要判例:指名競争入札における損害業者の排除(最判平18.10.26)

地方公共団体の契約

一般競争入札不特定多数の者を入札に参加させ、契約の相手方となるために競争させる方法
指名競争入札資産や信用等の点であらかじめ適切と思われる特定多数の者を通知によって指名し、入札の方法によって競争させる方法
随意契約競争の方法によらずに、特定の相手方を任意に選択して締結する方法7
せり売りにゅさつの方法によらずに、不特定多数の者を口頭または挙手によって競争させる方法

時効

地方公共団体の金銭債権・債務は、法律に特別の定めがある場合を除くほか、5年間消滅時効にかかる(236条1項)。

また、地方公共団体の金銭債権・債務の時効による消滅については、法律に特別の定めがある場合を除くほか、時効の援用を必要とせず、また、時効の利益の放棄もできない(236条2項)。

財産の管理・処分

地方公共団体の財産(公有財産・物品・債権・基金)は、条例または議会の議決による場合でなければ、これを交換し、出資の目的とし、もしくは支払手段として使用し、または適正な対価なくしてこれを譲渡し、もしくは課し付けてはならない(237条1項・2項)。8

  1. 会計年度:地方公共団体の収入・支出の計算を区分・整理し、財務会計を明らかにするために設けられる一定の期間。 ↩︎
  2. 参考:一般会計には予備費を計上しなければならないが、特別会計には予備費を計上しないことができる(217条1項)。 ↩︎
  3. 具体例:簡易下水道の費用など ↩︎
  4. 具体例:地方公共団体の運営するテレビ放送の視聴を開始するにあたって支払う加入金など ↩︎
  5. 参考:地方公共団体は、公益上必要がある場合に限り、寄付または補助をすることができる(232条の2↩︎
  6. 出納:現金・物品等の受入れおよび払出しのこと ↩︎
  7. 重要判例:地方公共団体が、地方自治法上、随意契約によることができない場合であるにもかかわらず、随意契約を行ったとしても、かかる違法は契約は、私法上、当然に無効となるものではない(最判昭62.5.19) ↩︎
  8. 参考:議会があらかじめ承認を与えたときは、その財産を適正な対価なくして譲渡することができる。 ↩︎
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