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決議方法
株主総会の決議は、定款に別段の定めがある場合を除き、「議決権を行使することができる株主」の「議決権の過半数を有する株主」が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うのが原則(309条1項)。これを普通決議という。
pie title 議決権の過半数をもつ株主が出席 "出席株主": 50 "欠席株主": 50
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pie title 議決権の過半数で可決 "賛成": 25 "反対": 25
ただし、取締役・会計参与・監査役の選任、取締役・会計参与の解任の決議については、定款の別段の定めによっても、定足数を3分の1未満の割合にするこができない(341条)。
なお、会社法は、一定の重大事項について、普通決議よりも厳格な決議要件である特別決議(309条2項)、特殊決議(309条3項)、特別特殊決議(309条4項)を定めている。
取締役設置会社の株主総会は、招集権者が株主総会の目的である事項として株主に通知した事項(298条1項2号)以外の事項について決議することができない(309条5項)。一方で、取締役会非設置会社の株主総会はこのような制限はない。
特別決議
- 要件
議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成 - 決議事項
通常の定款変更など
pie title 議決権の過半数をもつ株主が出席 "出席株主": 50 "欠席株主": 50
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pie title 議決権の過半数で可決 "賛成": 67 "反対": 33
特殊決議
- 要件
「議決権を行使できる株主」の半数以上の賛成、かつ、議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上の賛成 - 決議事項
発行する株式全部に譲渡制限を付するための定款変更
特別特殊決議
- 要件
「総株主」の半数以上の賛成、かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成 - 決議事項
非公開会社が剰余金の配当・残余財産の分配・議決権について、株主ごとの異なる取扱いを定める定款変更
株主総会決議の瑕疵
株主総会の決議に瑕疵があった場合、会社法が認めている救済方法としては次の3種類がある。
訴えの種類 | 提訴原因 | 提訴権者 | 提訴期間 | 裁量棄却1 |
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決議取消しの訴え | 招集手続・決議方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正なとき2 決議内容が定款に違反するとき 特別利害関係人が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がなされたとき | 株主・取締役・執行役・監査役・清算人 | 決議の日から3か月以内3 | 招集手続・決議方法の法令・定款違反の場合のみ可能 |
決議不存在確認の訴え | 決議内容が法令に違反するとき4 | 誰でも可 | いつでも可 | 不可 |
決議無効確認の訴え | 決議の手続的瑕疵が著しく、法律上決議があったと認められないとき5 | 誰でも可 | いつでも可 | 不可 |
- 裁量棄却:形式的に招集手続や決議方法の法令違反が認められるものの、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合に、請求を棄却すること(831条2項)。 ↩︎
- 重要判例:株主は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵があるときは、株主総会決議取消しの訴えを提起することができる(最判昭42.9.28) ↩︎
- 重要判例:提訴期間が経過した場合、新たな取消自由を追加して主張することはできない(最判昭51.12.24) ↩︎
- 重要判例:株主総会の決議の内容自体に法令・定款違背の瑕疵がなく、単に決議の動機・目的において公序良俗に違反する不法がある場合、その株主総会の決議は無効とはならない(最判昭35.1.12)。 ↩︎
- 具体例:取締役会の決議がないのに平取締役が勝手に招集した場合や、招集通知がまったくなかったと同視できるほどに招集通知漏れがあった場合など。 ↩︎