会社法4-5:「株主総会の決議」とは?普通決議・特別決議の違いを簡単解説

🧭この記事はこんな人におすすめ!
  • 行政書士試験で「会社法」を重点的に勉強している方
  • 株主総会の決議の種類(普通決議・特別決議など)の違いがよくわからない方
  • 決議に瑕疵があった場合の訴訟手続きについて整理したい方
目次

📘株主総会の決議とは?わかりやすく基礎から解説

株式会社では、重要な事項を決定するために「株主総会の決議」が行われます。
その決議方法にはいくつかの種類があり、決議内容によって要件が異なります。ここでは、行政書士試験でもよく問われる決議の種類と、決議に問題があった場合の対応方法について解説します。

✅普通決議とは?

普通決議とは、通常の議案について行われる、もっとも一般的な決議方式です(309条1項)。。
定款に特別な定めがない限り、以下の条件で成立します。

  • 出席要件:「議決権を行使できる株主」の過半数が出席
  • 賛成要件:その出席株主の議決権の過半数の賛成

たとえば、取締役の報酬の決定などが普通決議に該当します。

pie

title 議決権の過半数をもつ株主が出席
"出席株主": 50
"欠席株主": 50





👉

pie

title 議決権の過半数で可決
"賛成": 25
"反対": 25

⚠️普通決議の例外(会社法341条)

次のような事項については、定款で緩和しても「出席要件の下限(定足数)」を3分の1未満にすることはできません(341条)。

ただし、取締役・会計参与・監査役の選任、取締役・会計参与の解任の決議については、定款の別段の定めによっても、定足数を3分の1未満の割合にするこができない(341条)。

🔒取締役設置会社と非設置会社での違い(会社法309条5項)

  • 取締役会設置会社:あらかじめ通知された議題(298条1項2号)以外は決議できません(309条5項)。
  • 取締役会設置会社:通知されていない事項でも決議可能です

⭐特別決議・特殊決議・特別特殊決議の違い

会社法では、重要な事項ほど厳しい決議要件である、特別決議309条2項)、特殊決議309条3項)、特別特殊決議309条4項)が設けられています。

①特別決議(会社法309条2項)

  • 要件
    • 議決権を行使できる株主議決権の過半数を有する株主が出席
    • 出席した株主の議決権3分の2以上の賛成

  • 決議事項
    通常の定款変更など
pie

title 議決権の過半数をもつ株主が出席
"出席株主": 50
"欠席株主": 50





👉

pie

title 議決権の過半数で可決
"賛成": 67
"反対": 33

②特殊決議(会社法309条3項)

  • 要件
    • 「議決権を行使できる株主」の半数以上の賛成
    • かつ、議決権を行使できる株主の議決権の3分の2以上の賛成
  • 決議事項
    発行する株式全部に譲渡制限を付するための定款変更

③特別特殊決議(会社法309条4項)

  • 要件
    • 「総株主」の半数以上の賛成
    • かつ、総株主の議決権の4分の3以上の賛成
  • 決議事項
    非公開会社が剰余金の配当・残余財産の分配・議決権について、株主ごとの異なる取扱いを定める定款変更

⚖株主総会決議に瑕疵があった場合の救済制度

株主総会の決議に問題(瑕疵)がある場合、会社法では以下の3つの救済手段が認められています。

  • 株主総会決議取消しの訴え831条
  • 決議不存在確認の訴え830条1項
  • 決議無効確認の訴え830条2項
訴えの種類提訴原因提訴権者提訴期間裁量棄却1
決議取消しの訴え招集手続・決議方法が法令・定款に違反し、または著しく不公正なとき2
決議内容が定款に違反するとき
特別利害関係人が議決権を行使したことによって著しく不当な決議がなされたとき
株主・取締役執行役監査役・清算人決議の日から3か月以内3招集手続・決議方法の法令・定款違反の場合のみ可能
決議不存在確認の訴え決議内容が法令に違反するとき4誰でも可いつでも可不可
決議無効確認の訴え決議の手続的瑕疵が著しく、法律上決議があったと認められないとき5誰でも可いつでも可不可

📌まとめ

  • 普通決議は「過半数」の出席・賛成で成立
  • より重要な事項は、特別決議・特殊決議・特別特殊決議で対応
  • 決議に問題があれば、3つの訴えで救済される可能性あり
  1. 裁量棄却:形式的に招集手続や決議方法の法令違反が認められるものの、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさない場合に、請求を棄却すること(831条2項)。 ↩︎
  2. 重要判例:株主は、自己に対する株主総会の招集手続に瑕疵がなくとも、他の株主に対する招集手続に瑕疵があるときは、株主総会決議取消しの訴えを提起することができる(最判昭42.9.28) ↩︎
  3. 重要判例:提訴期間が経過した場合、新たな取消自由を追加して主張することはできない(最判昭51.12.24) ↩︎
  4. 重要判例:株主総会の決議の内容自体に法令・定款違背の瑕疵がなく、単に決議の動機・目的において公序良俗に違反する不法がある場合、その株主総会の決議は無効とはならない(最判昭35.1.12)。 ↩︎
  5. 具体例:取締役会の決議がないのに平取締役が勝手に招集した場合や、招集通知がまったくなかったと同視できるほどに招集通知漏れがあった場合など。 ↩︎
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