行政法2-3:公物とは?分類・成立・使用のポイントをわかりやすく解説

この記事はこんな人におすすめ
  • 行政書士試験の行政法分野で「公物」の出題に備えたい方
  • 公物の分類・成立・使用形態を体系的に整理したい方
  • 判例のポイントとあわせて覚えたい受験生
  • 公法と私法の違いが気になる初学者
目次

公物とは?基本的な意味と概要

公物(こうぶつ)とは、国や地方公共団体などの「行政主体」が、公共の目的のために提供している有体物をいいます。たとえば、公園や道路、庁舎などが該当します。

公物にはさまざまな分類方法があり、それぞれで性質や使用のルールが異なります。行政書士試験でも頻出ですので、分類ごとの違いをしっかり押さえましょう。

公物の分類

利用目的による分類

意味具体例
公用物官公署に使用させている公物庁舎・国公立学校の校舎
公共用物一般国民に使用させている公物道路・河川・公園

設置態様による分類

意味具体例
人工公物人工的に設置された公物道路・飛行場
自然公物慈善の状態で利用されてきた公物河川・海浜

所有権者による分類

意味具体例
国有公物国が所有権を有する公物国立公園
公有公物地方公共団体が所有権を有する公物市立体育館
私有公物私人が所有権を有する公物国立美術館に展示してある私人所有の絵画

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公物の成立と消滅

公物が「成立」したり「消滅」したりする条件は、公用物か公共用物かによって異なります。

所有権者による分類

公用物公共用物
人口公物自然公物
成立要件事実上の使用開始物が一般公衆の利用に供しうべき形態を整えること
行政主体の意思表示(公用開始行為)が存在すること1
公用開始という概念は成り立ち得ない
消滅要件事実上の使用中止物の形態が永久定期に変化し原状回復が不可能な場合、または、行政主体の意思表示(公用廃止行為)が存在する場合物の形態が永久的に変化し原状回復が不可能な場合

公物の法的性質とは?

公物は公共の目的のために使用される物であるため、公法上の制約を受けます。たとえば、以下のような制限があります。

  • 原則として、譲渡・相続は認められません23
  • 民法上の取得時効も原則として認められません(※例外あり)

🔍最重要判例:最判昭51.12.24(公物の取得時効)

公物の使用形態

公物の使い方には、次の3つの形態があります。

使用形態内容具体例
一般使用他人の共同使用を妨げない限り自由に使用できる道路を歩く、公園で遊ぶ、海で泳ぐ
許可使用法律上は一般的に禁止されているが、申請によって許可を受ければ使用可能公園でのイベント、道路でのデモ行進など
特許使用特定の人に独占的な使用を認める道路占用許可、河川水の占用権など

🔍最重要判例:最判平9.12.18(道路の通行妨害の禁止を求める権利)

公物の目的外使用とその制限

目的外使用とは、公物本来の目的を妨げない範囲で別の目的に使用することをいいます。4
ただし、たとえ本来の目的に支障がなくても、管理者の裁量で使用を拒否することができます。

🔍最重要判例:最判平18.2.7(呉市学校施設使用不許可事件)

まとめ|公物の分類・使用ルールをおさえて得点アップ!

  • 公物とは、行政主体が公共の目的のために提供する有体物
  • 公物は「利用目的・設置形態・所有者」によって分類される
  • 使用形態には「一般使用・許可使用・特許使用」の3種類がある
  • 公物の性質上、譲渡・相続取得時効には制限がある
  • 判例も出題されやすいのでセットで理解することが重要!
  1. 公用開始行為は、行政行為の一種とされている。 ↩︎
  2. 具体例:河川の流水は、私権の目的となることができない(河川法2条2項) ↩︎
  3. 判例:私有の陸地が自然現象により海没した場合についても、当該海没地の所有権が当然に消滅する旨の立法は現行法上存在しないから、当該海没地は、人による支配利用が可能であり、かつ、他の海面と区別しての認識が可能である限り、所有権客体たる土地としての性格を失わない(最判昭61.12.16) ↩︎
  4. 具体例:庁舎内に食堂を開いたり、銀行のキャッシュコーナーを設置するなど ↩︎
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