会社法2-2:株式会社設立の手続

目次

設立の手続

株式会社は次の手続を経て設立される。

①定款の作成

原始定款

株式会社の設立の手続として、まず最初に発起人が定款を作成する(26条)。ここで作成される定款を原始定款という。

原始定款は、公証人の認証を受けることによって、その効力を生じる(30条1項)。

定款に記載する事項

定款に記載する事項は、①絶対的記載事項、②相対的記載事項、③任意的記載事項の3つに分類される。

絶対的記載事項
  • 意味
    必ず定款に定めなければならない事項であって、定めておかないと定款自体が無効となるもの。
  • 具体例:
    • 目的
    • 商号
    • 本店の所在地
    • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
    • 発起人氏名名称住所
    • 発行可能株式総数1
相対的記載事項
  • 意味
    定款に定めがなくても定款自体の効力に影響はないものの、定めがない場合にはその効力が認められない事項
  • 具体例:
任意的記載事項
  • 意味
    強行法規・公序良俗に反しなければ自由に定めることができる事項
  • 具体例:
    • 取締役の員数
    • 定時株主総会の開催時期

変態設立事項

変態設立事項とは、28条に規定されている4つの事項のことであり、会社の財産的基盤を危うくするおそれのある事項のこと。

変態設立事項には、次の4種類がある。2

  • 現物出資
    金銭以外の財産による出資のこと(不動産・動産・特許権など)

  • 財産引受
    発起人が会社の成立を条件として成立後の会社のために一定の営業用の財産を譲り受ける契約のこと

  • 発起人の報酬、その他の特別利益
    発起人の労務に対して与えられる財産上の利益のこと

  • 設立費用
    会社の負担する設立に関する費用のこと(設立事務所の賃借料や、設立事務をする事務員の給与など)

変態設立事項については、
①所定の事項を原始定款に記載し(28条)、
②裁判所により選任される検査役の調査を受けなければならない(33条1項)。

なお、現物出資財産引受については、以下の場合に、②の検査役の調査が不要とされる(33条10項)。

👇検査役の調査が不要とされる場合

  • 定款に記載・記録された価額の総額が500万円を超えない場合
  • 市場価格のある有価証券について定款に記載・記録された価額が当該有価証券の市場価格として法務省令で定める方法により算定されるものを超えない場合
  • 定款に記載・記録された価額が相当であることについて弁護士等の証明を受けた場合(現物出資財産等が不動産である場合、不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

②株主の確定

株式の割当て

発起人は、株主を確定させるため、設立時発行株式に関する事項と株主となる者(株式引受人)を決定する。これを株式の割当てという。

株式発行事項の決定

設立時発行株式に関する事項のうち、設立に際して出資される財産の価額またはその最低額は、定款で定める必要があるが(27条4号)、その他の事項は定款で定める必要はなく、原則として、発起人の多数決で決定することができる。3

ただし、
①発起人が割当てを受ける設立時発行株式の数、
② ①の設立時発行株式と引換えに払い込む金銭の額、
③成立後の株式会社の資本金および資本準備金の額に関する事項
については、定款で定めていないときには、発起人の全員の同意を得て定めなければならない(32条1項58条1項・2項)。

③出資の履行

全額払込主義

発起人は、設立時発行株式の引受後遅滞なく、募集設立における募集株式の引受人は、発起人が定めた払込期日または払込期間中に、引き受けた株式につき全額の払込みまたは全部の給付(これを出資の履行4という)をしなければならない(34条1項本文63条1項)。56

※参考

失権手続

発起人のうち出資を履行しない者がいる場合、発起人は、失権予告付で払込を催告し、払込みがなければ失権することになる(36条1項・3項)。対して、発起人以外の引受人の不履行の場合、当然に失権することになる。

発起人失権予告付で催告失権
発起人以外当然に失権

払込取扱場所・払込取扱機関による保管証明

発起人の不正行為等(横領・搾取)を防止するため、払込みは、銀行・信託会社等の払込取扱機関払込取扱場所においてしなければならない(34条2項)。

そして、募集設立の場合には、発起人は、払込取扱機関に対して、払込金の保管証明書の交付を請求することができる(64条1項)。

これに対して、発起設立の場合、保管証明制度は廃止されている。7

創立総会

創立総会とは、設立時株主によって構成され、設立中の会社の意思を決定するための機関のこと。

募集設立の場合、発起人は、設立時募集株式の払込期日または払込期間の末日のうち最も遅い日以後、遅滞なく、創立総会を招集しなければならない(65条1項)。

創立総会は、会社設立後の株主総会に相当するものであり、手続についても株主総会とほぼ同様。

ただし、創立総会の決議要件は、株主総会の決議要件とは異なり、原則として、議決権を行使できる設立時株主の議決権の過半数であって、出席した設立時株主の議決権の3分の2以上73条1項)。8

④設立時役員等の選任

選任方法

設立時役員等9の選任10方法は、発起設立と募集設立で異なる。

発起設立補修設立
発起人は、出資の履行が完了した後、遅滞なく、設立時役員等を選任しなければならず(38条1項・3項)、発起人が1株につき1個の議決権を有し、その議決権の過半数で選任する(40条1項・2項本文)。1112創立総会の決議によって選任する(88条1項

設立時取締役の職務・権限等

設立時取締役13が選任された後でも、設立事務を行うのは発起人である。

設立時取締役は、設立事項(現物出資等について定款記載価額が相当であるか、出資の履行が完了しているか、設立手続に法令・定款違反がないか等)の調査を行う権限のみを有する(46条1項93条1項)。

そして、調査の結果、法令・定款違反等があれば、発起設立の場合は各発起人に通知し(46条2項)、募集設立の場合は創立総会へ報告しなければならない(93条2項)。

設立時役員等の解任

設立時役員等は、会社が成立するまでの間、解任することができる。設立時役員等の解任方法は、発起設立と募集設立でこのなる。

発起設立補修設立
発起人の議決権の過半数(設立時監査等委員である設立時取締役または設立時監査役を解任する場合は、3分の2以上の多数)によって解任する(43条1項創立総会の決議によって解任する(91条

⑤設立の登記

株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する(49条)。

  1. 参考:発起設立・募集設立のいずれの場合でも、発行可能株式総数を原始定款で定めていないときは、会社設立時までに定款を変更して定めなければならない(37条1項98条↩︎
  2. 参考:会社の設立に際して現物出資を行うことができるのは発起人のみであるが(34条1項63条1項)、財産引受については、発起人以外の者もその相手方となることができる。 ↩︎
  3. 参考:公開会社においては、会社設立時に発行する株式の数は、発行可能株式総数の4分の1を下回ることができない(37条3項)。 ↩︎
  4. 参考:発起人が出資の履行をすることにより設立時発行株式の株主となる権利の譲渡は、設立後の株式会社に対抗することができない(35条)。 ↩︎
  5. 参考:発起人全員の同意があるときは、登記・登録その他の権利の設定・移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることができる(34条1項但書)。 ↩︎
  6. 参考:設立時発行株式の引受けに係る意思表示については、心裡留保民法93条1項但書)と虚偽表示民法94条1項)の規定は適用されない(51条1項)。また、株式会社の成立後は、錯誤民法95条1項)・詐欺強迫民法96条1項)を理由として設立時発行株式の引受けの取消しをすることもできない(51条2項)。 ↩︎
  7. 参考:保管証明書を交付した銀行等は、当該証明書の記載が事実と異なること、または当該金銭の返還に関して制限があることをもって、成立後の株式会社に対抗できな(64条2項)。 ↩︎
  8. 参考:創立総会においても、株主総会と同様、書面による議決権行使や電磁的方法による議決権行使が認められている(75条76条)。 ↩︎
  9. 設立時役員等:会社の設立に際して、取締役、会計参与、監査役、会計監査人となる者のこと。 ↩︎
  10. 参考:欠格事由に該当しない限り、発起人が設立時役員等に就任することは妨げられない。 ↩︎
  11. 参考:定款で設立時役員等として定められた者は、出資の履行が完了した時に、設立時役員等に選任されたものとみなされる(38条4項)。 ↩︎
  12. 参考:節理地しようとする株式会社が監査等委員会設置会社である場合には、設立時監査等委員である設立時取締役は3人以上でなければならない(39条3項)。 ↩︎
  13. 設立時取締役:株式会社の設立に際して取締役となる者のこと(38条1項)。 ↩︎
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