会社法3-3:「株式の譲渡」とは?譲渡制限や対抗要件までわかりやすく解説

🎯 この記事はこんな人におすすめ!
  • 行政書士試験で「会社法」の出題に不安がある方
  • 株式の譲渡の自由原則や制限、対抗要件の整理に苦労している方
  • 「株式譲渡制限」「自己株式の取得制限」など、頻出論点を一気に押さえたい方
目次

株式の譲渡とは?基本と原則をまず押さえよう!

株式会社に出資しても、その出資は返してもらうことはできません。そこで出資者(株主)は、自分の出資を回収する手段として「株式の譲渡(売却など)」が認められています。

また、株式会社では「株主の個性」はそれほど重視されないため、誰が株主になっても会社にとって大きな問題にはなりにくいという特性があります。

このような理由から、株式会社の株式は原則として自由に譲渡することができます(127条)。これを 株式譲渡自由の原則 といいます。

法律で制限されるケースもある!株式譲渡の4つの制限パターン

株式の譲渡は自由が原則ですが、以下のように法律で譲渡が制限されているケースもあります。

①権利株の譲渡制限

会社設立前」や「新株1発行前」に引き受けた株式(=権利株)は、たとえ譲渡しても会社に対しては効力がありません35条63条2項208条4項)。

👉 ただし、譲渡自体は当事者間では有効です。

②株券発行前の譲渡制限

株券発行会社において、まだ株券が発行されていない状態での株式譲渡は、会社には対抗できません128条2項)。

👉 こちらも、譲渡自体は当事者間では有効です。

③子会社による親会社株式の取得制限

子会社は、原則として親会社の株式を取得できません135条1項)。

ただし、事業譲渡・合併・会社分割などの組織再編行為によって取得する場合などは例外です(135条2項)。

👉 この場合でも、取得した株式は相当の時期に処分する必要があります(135条3項)。

④自己株式の取得制限

会社が自分自身の株式(=自己株式2)を取得することは、実質的に「出資の払戻し」にあたるため、債権者保護の観点から取得できる場合を限定しています(155条)。34

自己株式を取得できる場合

  • すべての株主に申込機会を与える場合
    株主総会の普通決議が必要(156条1項

  • 特定の株主から取得する場合
    株主総会の特別決議が必要(160条1項309条2項2号5

  • 子会社から取得する場合
    取締役会設置会社→取締役会決議
    取締役会非設置会社→株主総会の普通決議で足りる(163条

  • 市場取引等により取得する場合
    取締役会設置会社では、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款で定めることができる(165条2項

✅ 取得した自己株式は「保有し続けてもOK」ですが、不要になった場合には「消却6」することも可能です(178条)。

定款で制限される場合も!譲渡制限株式とは?

株式会社は、定款で譲渡を制限(譲渡には会社の承認が必要)することも可能です(107条1項1号108条1項4号)。このような株式を「譲渡制限株式」といいます。78

株式を譲渡する際の承認機関(原則)

定款による株式の譲渡制限を設けた場合、株式を譲渡するには、以下のとおりが原則です(139条1項本文)。

会社の形態承認機関
取締役会設置会社取締役会
取締役会非設置会社株主総会(普通決議)

※定款で異なる定めを置くことも可能です(139条1項但書)。9

株式の譲渡方法と対抗要件の整理

株式の譲渡が有効に成立するためには、相手との意思表示の合致が必要です。

また、それだけでは足りず、会社第三者に対して効力を主張するには「対抗要件」も満たす必要があります。

株式の譲渡方法と対抗要件は、株券発行会社か株券不発行会社かによって異なります。

株券発行会社株券不発行会社
株式の譲渡方法意思表示の合致&
株券の交付
(128条1項本文)
意思表示の合致
第三者への対抗要件株券の交付株主名簿の名義書換
(130条1項)
会社への対抗要件株主名簿の名義書換10
(130条2項)1112
株主名簿の名義書換
(130条1項)

✅ まとめ:株式の譲渡は原則自由、ただし制限も重要!

  • 株式の譲渡は「原則自由」が基本(127条)
  • ただし、法律や定款による譲渡制限が存在する
  • 対抗要件(株券交付や名義書換)の整理も頻出ポイント!

行政書士試験では、「自由の原則」「法律による制限」「定款による制限」「対抗要件」がバランスよく問われます。表や図で整理して、知識を確実に定着させましょう!

  1. 新株:会社の成立後に発行される株式。 ↩︎
  2. 自己株式:その会社自身の株式。 ↩︎
  3. 参考:株式会社が他の会社の事業の全部を譲り受ける場合には、当該株式会社は、当該他の会社が有する当該株式会社の株式を取得することができる(155条10号)。 ↩︎
  4. 参考:会社債権者や既存株主の利益を害しないようにするため、自己株式の有償取得は、分配可能額の範囲内でのみ認められる(461条1項1号~7号)。 ↩︎
  5. 参考:取得の相手方となる特定の株主は、原則として、自己株式取得を承認するかどうかを決定する株主総会で議決権を行使することができない(160条4項)。 ↩︎
  6. 消却:発行済株式を回収して、これを絶対的に消滅させること。 ↩︎
  7. 重要判例:会社の承認を受けないでなされた譲渡制限株式の譲渡は、当該株式会社に対する関係では効力を生じないが、譲渡の当事者間では有効である(最判昭48.6.15) ↩︎
  8. 参考:合併や会社分割などの一般承継による株式の取得について、定款において、会社の承認を要する旨の定めをすることはできない。 ↩︎
  9. 具体例:代表取締役を承認機関とすることも可能。 ↩︎
  10. 名義書換:株式を取得した者の氏名・名称・住所を株主名簿に記載・記録すること。 ↩︎
  11. 重要判例:株主名簿の名義書換がなくても、会社の側から取得者を株主と扱うことはできる(最判昭30.10.20) ↩︎
  12. 重要判例:会社が株主による株主名簿の名義買替請求を不当に拒絶した場合には、当該株主は、会社に対して、株主であることを主張することができる(最判昭42.9.28) ↩︎
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