行政指導とは?
行政指導とは、行政機関(国や自治体など)が法律に基づかず、相手方の「協力」を前提に、何かをするように、あるいはやめるように求める行為のことです。
つまり、「お願い」や「助言」といったソフトな方法で行政の目的を達成しようとする手段です。相手方の協力を前提として、一定の行為をすること、または、しないことを求めること。
行政指導の3つの種類
行政指導には、目的や内容に応じて次の3つのタイプがあります。
意味 | 具体例 | |
助成的 行政指導 | 情報提供や技術援助などを通じて、国民を支援する行政指導 | 農業上の作付け指導 中小企業者への経営指導 税務相談 |
調整的 行政指導 | 市民や業界間のトラブルや利害の対立を調整するため、行政があっせんや仲介に入る行政指導 | 建築主と近隣住民との紛争で、建築確認を一時保留し調整を図る行政指導 |
規制的 行政指導 | 法的拘束力のある行政行為の代わりに、「勧告」などの形式で協力を求める行政指導 | 病院の開設を中止するよう求める「病院開設中止勧告」など |
行政指導に対する規制はある?
法律の根拠は不要
行政指導は、強制力を伴わず、あくまでも相手方の協力を前提とした行為なので、法律の根拠は不要とされています。
つまり、「お願いベース」なので法的な裏付けなしでも行えるわけです。
行政指導手続
行政指導に関する手続やルールについては、行政手続法で一定の規制が定められています。
(※詳しくは「行政指導手続」の記事で解説しています)

行政指導に不満があるときの救済手段は?
行政指導に不服がある場合、法的に争う手段が2つあります。
取消訴訟の提起
消訴訟を提起するためには、行政庁の行為に処分性(行政事件訴訟法3条2項)が認められることが必要ですが、行政指導は基本的に「お願い」なので、以前は行政行為(=処分)ではない=取消訴訟の対象外とされてきました。
しかし、近年の最高裁判例では、病院開設中止勧告のように、実質的に国民の権利を制限するような行政指導には「処分性」があると判断され、取消訴訟が可能となるケースも出てきました。
国家賠償請求
行政指導が違法で、その結果として損害を受けた場合には、国家賠償法に基づいて損害賠償請求が可能です。
つまり、行政指導でも、やり方を誤れば国が損害賠償の責任を負うことがあります。
まとめ
行政指導は、国民の協力を前提に行われる「非強制的な行政手段」であり、法的拘束力はないものの、現実には一定の影響力を持つケースもあります。
行政書士試験では、3つの種類の区別や、取消訴訟・国家賠償との関係などが出題ポイントになるため、しっかりと理解しておきましょう。