行政法28-3:直接請求とは?条例制定や議会の解散も可能な住民の権利

この記事はこんな人におすすめ
  • 行政書士試験で地方自治法を学んでいる受験生
  • 「直接請求って何?」と制度の概要を知りたい方
  • 地方自治における住民参加の仕組みに興味がある方
  • 条例の制定や議会解散などの請求手続に関心がある方
目次

住民が政治に直接参加できる「直接請求制度」とは?

私たちが暮らす市区町村や都道府県の政治は、時に国の政治以上に私たちの日常生活に影響を与えます。そのため、地方自治法では、住民が地方政治に直接関わり、監視・改善するための仕組みとして「直接請求1」を認めています。

これは、住民自らが一定の条件を満たす署名を集めることで、条例の制定や改廃、事務監査、議会の解散、長や議員の解職などを直接請求できる制度です。

直接請求の4つの種類

直接請求には、次の4つのタイプがあります。

  • 条例の制定改廃請求2
    例:新しい条例を作りたい/既存の条例を変更・廃止したい

  • 事務監査請求
    例:地方公共団体の事務執行が適正かどうか調べてほしい

  • 議会の解散請求
    例:議会が住民の意思に反しているため、一度解散させたい

  • 議員・長・主要公務員の解職請求(リコール)
    例:長や議員の解職(リコール)を求めたい

直接請求のやり方と必要な署名数

直接請求は、その地方公共団体の有権者の一定割合の署名を集めて行います。署名数や請求の相手方(請求先)は請求内容によって異なります。例えば、条例の制定・改廃を請求する場合は、議会に対して請求を行います。

※具体的な署名数や請求先は、次の通りです。

必要署名数
(選挙権を有する者)
請求先請求後の措置
条例の制定
改廃請求

74条34
50分の1以上請求を受理した日から20日以内に議会を招集
意見を付けて議会に付議
結果を代表者に通知&公表
事務監査請求
75条
50分の1以上監査委員監査の結果に関する報告を決定
代表者に送付&公表
法律に基づく委員会・委員に提出
議会の解散請求
76条
原則:3分の1以上選挙管理委員会解散の投票で過半数の同意→解散
78条
議員・長の
解職請求

80条81条
原則:3分の1以上選挙管理委員会解散の投票で過半数の同意→解散
83
主要公務員の
解職請求

86条5
原則:3分の1以上議員の2/3以上出席→3/4以上の同意→失職
87条1項

まとめ:直接請求は住民の「声」を政治に届ける重要な手段

直接請求」は、私たち住民が地方自治体の政治に直接関与できる、非常に重要な制度です。
条例を新たに作ったり、議会を解散させたりといった強い権限を、有権者の手で行使できるこの制度は、まさに民主主義の原点ともいえるでしょう。

  1. 参考:直接請求は選挙権を有する者でなければすることができないので、外国人は直接請求をすることができない。 ↩︎
  2. 改廃:改正したり廃止したりすること。 ↩︎
  3. 参考:地方税の賦課徴収・分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例の制定改廃請求をすることはできない(74条1項かっこ書↩︎
  4. 参考:法定受託事務に関する条例についても、条例の制定改廃請求の対象とすることができる。 ↩︎
  5. 参考:主要公務員の解職請求の対象となるのは、①副知事・副市町村長、②指定都市の総合区長、③選挙管理委員、④監査委員、⑤公安委員会の委員86条1項)。 ↩︎
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