行政法4-4:「行政罰」とは?行政刑罰と秩序罰の違いをわかりやすく解説

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行政罰とは?行政刑罰と秩序罰をやさしく解説!

行政罰とは、法律や条例に定められた行政上の義務に違反したときに、制裁として科される罰のことです。これは警察や裁判所ではなく、行政の権限にもとづいて行われます。

行政罰は、国民の権利や義務に大きく関わるため、「法律による行政の原理(=法律の留保の原則)」に従って運用されます。つまり、行政罰を科すには必ず法律や条例にその根拠がなければなりません

行政罰の2つの種類|行政刑罰と秩序罰

行政罰は、大きく分けて行政刑罰秩序罰の2種類があります。1

①行政刑罰(ぎょうせいけいばつ)

行政刑罰とは、行政上の義務違反に対して、刑法で定められた正式な刑罰(死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料)を科すものです。2

行政刑罰は、刑事訴訟法という法律に従い、刑事裁判によって科されます。つまり、通常の「犯罪」と同じ手続きで裁かれるということです。

② 秩序罰(ちつじょばつ)

秩序罰とは、軽微な形式的違反(例:届出の未提出など)に対して、過料(かりょう)を科す行政罰です。ここでの「過料」は、刑罰ではなく行政上のペナルティと考えましょう。

秩序罰には2つのタイプがあります:

  • 法律違反の場合
    裁判所の決定によって過料が科されます(非訟事件手続法に基づく)。

  • 条例違反の場合
    地方公共団体の長の処分によって過料が科されます(地方自治法に基づく)。

⚠️ポイント:秩序罰は刑罰ではないため、刑法の規定(刑法総則)は適用されません。

行政刑罰と秩序罰の比較

比較項目行政刑罰秩序罰
罰の種類刑法上の刑罰
(死刑・懲役・禁錮・罰金・拘留・科料)
刑罰以外の制裁(過料
刑法総則の適用あり刑法8条なし
手続刑事訴訟法の定める手続き法律違反の場合
→非訟事件手続法の定める手続

条例違反の場合
→地方自治法の定める手続

まとめ

  • 行政罰は必ず「法律または条例の根拠」が必要
  • 行政刑罰は刑事裁判で科される正式な刑罰
  • 秩序罰は軽微な違反に対する行政上の過料
  • 「刑法総則の適用があるかどうか」で両者を区別すると覚えやすい!
  1. 重要判例:行政刑罰と秩序罰は、目的・要件および実現の手続を異にし、必ずしも二者択一の関係にあるものではないから、両者を併科することもできる(最判昭39.6.5)。 ↩︎
  2. 参考:行政刑罰については、違反行為者だけではなくその使用者および事業主(法人等)をも罰する両罰規定を置くことができる ↩︎
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