民法16-1:債権譲渡

目次

債権譲渡とは?

事例1
---
config:
  theme: neutral
---
sequenceDiagram
autonumber

actor A(譲渡人)
actor B(債務者)
actor C(譲受人)

A(譲渡人) ->> B(債務者):100万円
A(譲渡人) -->> C(譲受人):貸金債権を譲渡
C(譲受人) ->> B(債務者):100万円

AはBに対して有していた100蔓延の貸金債権を、Cに譲渡した。

債権譲渡とは、債権の同一性を保ったまま契約によって債権を移転させることをいいます。
例えば、事例1の場合、CはBに対して100万円の支払いを請求できることになります。

債権は、原則として自由に譲渡することができます(466条1項本文)。

譲渡性の制限

債権の性質による制限

債権の性質が譲渡を許さない場合には、債権譲渡を行うことができません(466条1項但書)。

例えば、債権が債権者・債務者の個人的な関係を基礎としており、債権者が変わることによって給付の内容が変質してしまう場合が該当します。具体的には、著名な建築家に建物の設計をしてもらう債権などがあげられます。

法律上の譲渡制限

法律が生活保障の観点から、本来の債権者に対してのみ給付させることを目的とする債権については、法律上で譲渡が禁止されています。例えば、扶養を受ける権利については、881条において譲渡することがhできません。

譲渡制限特約

当事者間で債権譲渡を禁止または制限する旨の合意(譲渡制限特約)をした場合でも、債権譲渡の効力は妨げられることはありません(466条2項)。

ただし、譲渡制限特約は、悪意または重過失のある第三者には対抗することができます(466条3項)。1

債権譲渡の対抗要件

対抗要件の構造

事例2

①Aは、Bに対して有していた100万円の貸金債権をCに譲渡し、CはBに対して100万円の支払いを請求した。

---
config:
  theme: neutral
---
sequenceDiagram
autonumber

actor A(譲渡人)
actor B(債務者)
actor C(譲受人)

A(譲渡人) ->> B(債務者):100万円
A(譲渡人) -->> C(譲受人):貸金債権を譲渡
C(譲受人) ->> B(債務者):100万円

②Aは、Bに対して有していた100万円の貸金債権をCに譲渡した後、Dに対しても譲渡した。その後、CはBに対して100万円の支払いを請求した。

---
config:
  theme: neutral
---
sequenceDiagram
autonumber

actor A(譲渡人)
actor B(債務者)
actor C(譲受人1)
actor D(譲受人2)

A(譲渡人) ->> B(債務者):100万円
A(譲渡人) -->> C(譲受人1):貸金債権を譲渡
A(譲渡人) -->> D(譲受人2):貸金債権を譲渡
C(譲受人1) ->> B(債務者):100万円

債権の譲渡は、譲渡人が債務者に通知するか、または債務者が承諾しなければ、債務者やその他の第三者に対抗することができません(467条1項)。

例えば、事例2の①の場合、CはAからの通知やBの承諾がなければ、Bに対して100万円の支払いを請求することができません。
さらに、Aの通知やBの承諾は、確定日付のある証書2によって行わなければ、債務者以外の第三者に対抗することができません(467条2項)。したがって、事例2の②の場合、Cは、確定日付のある証書によるAの通知またはBの承諾がなければ、Dに対して貸金債権の取得を主張することができません。

対抗要件の構成要素

債権譲渡の対抗要件の通知または承諾は、次のルールに従ってなされなければなりません。

通知承諾
主体譲渡人3債務者
客体債務者譲渡人でも譲受人でもよい
(大判大6.10.2)
時期譲渡前×不可譲受人が特定されていれば可能
(最判昭28.5.29)
譲渡後可能

優先劣後の決定

債権が二重に譲渡された場合、譲受人同士の優劣は、単に確定日付の先後で決まるのではなく、確定日付のある通知が債務者に到達した日時、または確定日付のある債務者の承諾がされた日時の先後によって決定されます(最判昭49.3.7)。

確定日付のある通知が同時に到達した場合、それぞれの譲受人は、債務者に対し自らの譲受債権について全額を請求することができます。債務者は、単に同順位の譲受人が他に存在するからといって弁済の責任を免れることはできません(最判昭55.1.11)。

なお、一方の譲受人に対して弁済した場合、他方の譲受人からの請求を拒むことができます。その結果、支払いを受けれなかった譲受人は、支払いを受けた譲受人に対して債権額を按分した額を不当利得として請求することが可能です。

債権譲渡の効果

債権譲渡が行われると、債権はその同一性を保ったまま移転し、これに伴って各種の抗弁も移転します。

また、債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって、譲受人に対抗することができます(468条1項)。4

  1. 参考:譲渡制限特約のある債権でも、差押債権者の善意・悪意、過失の有無を問わず転付命令(強制的に債権を移転する旨の裁判所の命令)によって移転することができる(466条の4第1項)。 ↩︎
  2. 確定日付のある証書:民法施行法5条1項に列挙されている証書。公正証書や内容証明郵便など ↩︎
  3. 重要判例:譲受人が譲渡人に代位して通知することはできない(大判昭5.10.10) ↩︎
  4. 具体例:債権の不成立、譲渡人に対する弁済による債権の消滅、相殺による債権の消滅など ↩︎
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次