民法22-1:事務管理

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事務管理とは?

事例
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actor B_管理者
actor A_本人


B_管理者 ->> Aの家:修理(事務管理)
A_本人 -->> B_管理者:委託無し
B_管理者 ->> A_本人:費用償還請求

Aの家の窓が台風で割れてしまったため、BはAに頼まれていないものの、その窓を修理した。

事務管理とは、義務がないにもかかわらず、他人のために事務を管理することをいいます(697条1項)。

管理者が本人のために有益な費用を支出した場合、本人に対して、その償還を請求することができます(702条1項)。

事例では、BがAに頼まれていないにもかかわらず、Aの家の窓を修理した場合、Bの行為は事務管理にあたります。したがって、BはAに対して、窓の修理にかかった費用の償還を請求することができます。

このように、事務管理も、契約と同様に債権発生原因となる。

事務管理制度の趣旨は、社会生活を営む上では相互に助け合うことが求められるため、他人の生活への干渉を適法と認める点にあります。

要件

法律上の義務がないこと

契約がある場合、その事務の管理は契約上の債務となります。また、親権のような法律上の地位がある場合には、法律の規定に基づいて他人の事務を管理する義務が生じるため、事務管理にはあたりません。

他人のためにする意思があること

事務管理が成立するためには、他人のためにする意思が必要です。この「他人のためにする意思」は、自己の利益を考える意思が併存していても認められます。1

他人の事務を管理していること

事務管理の対象となる事務は、法律行為だけでなく、事実行為(隣家の犬に餌をやるなど)でも構いません。

本人の意思および利益に適合していること

管理者は、事務の性質に従い、最も本人の利益に適合する方法によって事務管理を行わなければなりません(697条1項)。
また、管理者が本人の意思を知っている場合、または推測できる場合には、その意思に従って事務管理をしなければなりません(697条2項)。

効果

管理者の義務

管理者が、本人の身体・名誉・財産に対する急迫した危険を回避するために事務管理を行った場合、悪意または重過失がない限り、それによって生じた損害を賠償する責任を負いません(698条)。これを緊急事務管理といいます。2

また、管理者は、本人またはその相続人・法定代理人が管理を行うことができるようになるまで、事務管理を継続しなければなりません(700条本文)。
ただし、事務管理の継続が本人の意思に反する場合や、本人にとって不利益であることが明らかな場合には、管理を継続してはなりません(700条但書)。3

本人の義務

管理者が本人のために有益な費用を支出した場合、本人に対して、その償還を請求することができます(702条1項)。4

また、管理者が本人のために有益な債務を負担した場合、本人に対し、自己(管理者)にに代わってその弁済をするよう請求することができます(702条2項650条2項前段)。

ただし、管理者が本人の意思に反して事務管理を行った場合には、管理者が請求ができる範囲は、本人が現に利益を受けている限度に限定されます(702条3項)。

委任と事務管理の違い

委任事務管理

報酬請求権特約があれば×
費用前払請求権
(649条)
×
費用償還請求権
(650条1項)
有益な費用のみ
(702条1項)
代弁済請求権
(650条2項)
有益な費用のみ
(702条2項)
損害賠償請求権
(650条3項)
×

善管注意義務
(644条)
緊急事務管理の場合×
(698条)
報告義務
(645条)

(701条645条)
受領物引渡義務
(646条1項)

(701条646条)
金銭消費の責任
(647条)

(701条647条)
  1. 具体例:隣家の壁を修理して自宅に倒れこむのを防止する場合など ↩︎
  2. 参考:698条の反対解釈から、急迫の危害がなければ、委任の場合(644条)と同様、善管注意義務を負うと考えられている。 ↩︎
  3. 重要判例:管理者が本人の名でした法律行為の効果は、当然に本人に及ぶものではなく、無権代理行為となる(最判昭36.11.30) ↩︎
  4. 参考:本人は、管理者に対する報酬支払義務を負わない ↩︎
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