- 行政書士試験の「行政法」で行政指導の意味や種類がよく分からない方
- 「行政指導ってお願いなのにどうして問題になるの?」と疑問に思っている方
- 行政指導に法的根拠がない理由や、違法な行政指導への対処法を知りたい方
📘行政指導とは?──行政の“お願い”にどう向き合うか
行政指導とは、行政機関(国や自治体など)が法律に基づかず、相手方の「協力」を前提に、何かをするように、あるいはやめるように求める行為のことです。
つまり、「お願い」や「助言」といったソフトな方法で行政の目的を達成しようとする手段です。相手方の協力を前提として、一定の行為をすること、または、しないことを求めること。
🧩行政指導の3つの種類【分類と具体例で理解】
行政指導には、目的や内容に応じて次の3つのタイプがあります。
種類 | 意味 | 具体例 |
助成的 行政指導 | 情報提供や技術援助などを通じて、国民を支援する行政指導 | 農業上の作付け指導 中小企業者への経営指導 税務相談 |
調整的 行政指導 | 市民や業界間のトラブルや利害の対立を調整するため、行政があっせんや仲介に入る行政指導 | 建築主と近隣住民との紛争で、建築確認を一時保留し調整を図る行政指導 |
規制的 行政指導 | 法的拘束力のある行政行為の代わりに、「勧告」などの形式で協力を求める行政指導 | 病院の開設を中止するよう求める「病院開設中止勧告」など |
特に規制的行政指導は、実質的に国民の行動を制限するケースがあり、後述するように法的な争いの対象になることもあります。
行政指導に対する規制はある?
⚖行政指導に法律の根拠は必要?──「お願い」に法的裏付けはいらない
行政指導は、強制力を伴わず、あくまでも相手方の協力を前提とした行為なので、法律の根拠は不要とされています。
つまり、「お願いベース」なので法的な裏付けなしでも行えるわけです。
📝行政指導の手続はどうなっている?
行政指導に関する手続やルールについては、行政手続法で一定の規制が定められています。
主なポイントとしては:
- 行政指導の趣旨や内容は明確にしなければならない
- 担当職員の氏名や所属などを示す義務がある
- 相手方が行政指導に従わなかったことを理由に不利益処分をすることは原則できない
※詳しくは別記事「行政指導手続のルールまとめ」で解説しています。

🚨行政指導に不満があるときは?──救済手段は2つある
行政指導に不服がある場合、法的に争う手段が2つあります。
①取消訴訟(処分性がある場合)
消訴訟を提起するためには、行政庁の行為に処分性(行政事件訴訟法3条2項)が認められることが必要ですが、行政指導は基本的に「お願い」なので、以前は行政行為(=処分)ではない=取消訴訟の対象外とされてきました。
しかし、近年の最高裁判例では、病院開設中止勧告のように、実質的に国民の権利を制限するような行政指導には「処分性」があると判断され、取消訴訟が可能となるケースも出てきました。
🔍重要判例:最判平17.7.15(病院開設中止勧告の処分性)
②国家賠償請求(損害を受けた場合)
行政指導が違法で、その結果として損害を受けた場合には、国家賠償法に基づいて損害賠償請求が可能です。
つまり、行政指導でも、やり方を誤れば国が損害賠償の責任を負うことがあります。
🔍重要判例:最判平5.2.18(指導要綱に基づく開発負担金)
まとめ|行政指導は“柔らかいけれど侮れない”
行政指導は、国民の協力を前提に行われる「非強制的な行政手段」であり、法的拘束力はないものの、現実には一定の影響力を持つケースもあります。
行政書士試験では、3つの種類の区別や、取消訴訟・国家賠償との関係などが出題ポイントになるため、しっかりと理解しておきましょう。