会社法5-3:「剰余金の配当」とは?手続・ルール・違法配当のリスクまでわかりやすく解説!会社法5-3:剰余金の配当

この記事はこんな人におすすめ!
  • 「剰余金の配当」って何?とにかく基本から知りたい方
  • 株主総会取締役会の役割との関係を理解したい方
  • 違法配当とは何か、実際にどんなリスクがあるのか知りたい方
  • 行政書士試験の会社法対策を進めている受験生の方
目次

剰余金の配当とは?

剰余金の配当」とは、会社が利益の一部を株主に分配することを指します。
この配当は会社の財産から支払われるため、株主にとっては利益還元の重要な手段となります。

会社は、確定した計算書類を基にして、同じ事業年度内に複数回の配当を行うことも可能です。1

さらに、会社が剰余金を配当する際には、資本金の額の4分の1に達するまでは、配当によって減った剰余金の10分の1を「資本準備金」や「利益準備金」として計上する義務があります(445条4項)。 

剰余金の配当手続

原則:株主総会の決議が必要

株式会社が剰余金を配当する場合、その都度、株主総会の普通決議によって、
どんな財産を配当するのか(お金・物など)を決める必要があります(454条1項309条1項)。2

現物配当:特別決議が必要なケースも

配当が「お金」ではなく「モノ(不動産や株式など)」で、
なおかつ株主に金銭の請求権を与えない場合は、株主総会の特別決議が必要になります(454条4項309条2項10号)。

中間配当:定款の定めがあれば取締役会でOK

取締役会設置会社は、会社の定款で定めていれば、1事業年度につき1回まで取締役会決議によって途中段階で剰余金を配当する「中間配当」が可能です(454条5項前段)。

会計監査人設置会社の特例

以下の要件を満たす会社では、株主総会の承認なしに取締役会の決議で配当を行うことが可能になります(459条1項)。

この場合、定款にその旨を記載しておく必要があります

剰余金配当の「財源」に関するルール

純資産が300万円を下回ると配当不可

会社の純資産3300万円を下回る場合、そもそも剰余金の配当を行うことはできません(458条)。
これは会社の資本維持のための重要なルールです。

分配可能額の上限を超えてはいけない

剰余金の配当は、配当が効力を生ずる日の会社の「分配可能額」の範囲内でなければなりません。
この上限を超えて配当すると「違法配当」となります461条1項8号)。

違法配当が行われた場合のリスクと責任

違法配当がなされた場合、以下のように処理されます。

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config:
  theme: neutral
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flowchart LR
会社 -->|①金銭支払請求|株主
会社債権者 -->|債権|会社
会社債権者 -->|②金銭支払請求|株主
会社 -->|③損害賠償請求|取締役
取締役 -->|④悪意の株主への求償|株主

会社⇒株主への返還請求

違法配当を受けた株主に対し、会社は受け取った金銭などに相当する額を返すよう請求できます(462条1項)。
これは、株主が善意でも悪意でも変わりません。

債権者⇒株主も返還を請求できる

会社に対して債権を持っている人(債権者)も、株主に対して返還を請求できます(463条2項)。

会社⇒取締役への損害賠償請求権

会社は、違法配当によって損失が発生した場合、取締役に対して損害賠償を請求することができます(423条1項462条1項6号)。

取締役が負担した場合は(悪意の)株主に求償可能

取締役が会社に損害賠償した場合、悪意の株主に対して求償請求が可能です(463条1項)。

まとめ

剰余金の配当は、会社と株主を結ぶ重要な仕組みですが、
適正な手続きと財源の確認を怠ると「違法配当」となり、大きな責任が生じる可能性があります。

行政書士試験では、これらの条文や判例が問われることもあるため、
手続・制限・責任関係をまとめて理解することが重要です!

  1. 参考:株式会社は、剰余金の配当をする場合には、資本金の額の4分の1に達するまで、当該剰余金の配当により減少する剰余金の額に10分の1を乗じて得た額を、資本準備金または利益準備金として計上しなければならない(445条4項)。 ↩︎
  2. 参考:当該会社の株式・新株予約権・社債を配当財産とすることはできない(454条1項1号107条2項2号ホかっこ書)。 ↩︎
  3. 純資産:資産から負債を差し引いたもの。 ↩︎
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